※プリッシュが結婚する話です
何回目かわからないけど、プリッシュは自主的に元の世界に帰っています




「俺、結婚するんだ」

そう言ったプリッシュにライトはいつも通りの無表情でそうか、と答えた。隣にいた秩序の女神が嬉しそうにおめでとうと言い、あの傲慢な淑女さえ目を細めて嬉しそうにそれは良かったですわねと言った。
何回目かの戦いでこの世界を自主的に去った少女は、少しだけ大人っぽくなった身体にほっそりとした白いドレスを纏っていた。ドレスを試着したら、どうしてもここに来たくなったんだと悪戯を成功させた子供のようにプリッシュは笑う。
女神は素直に忌み子と呼ばれた少女を愛してくれる存在が表れたことに安堵する。結婚をしたかったと言っていたシャントットは嫁ぐのならば女らしくしなければいけませんわよと年上の女性らしくプリッシュを諌めたので、また嬉しそうにプリッシュが笑った。
久しぶりの再会と少女の結婚に3人は微笑んで近況を報告し合う。その華やかな女性陣の一連の流れをじっと黙って見ていたライトが無言で秩序の聖域を離れた事も彼女らはあえて咎める事をしなかった。

少し経って彼女らの話が一段落付いた頃、ふとプリッシュが遠くに視線を移すとライトが聖域に向かって来るのが見えた。見間違いで無ければ、隣にカオス軍のリーダー格もいるのだが、喜びに心が満ちていたプリッシュにとってそれは大きな問題とならないらしく手をぶんぶんと振って2人を歓迎する。

「おっさん!久しぶり!」
「聞いたぞ小娘。結婚するそうだな」
「あ、もう知ってんのかぁ。なんだか照れるなぁ」
「それで、相手の男はどんな男だ。職業は?年収は?お主をちゃんと養ってくれそうなのか」
「うぇ、おっさんどうしたんだよ?」
「いいから答えなさいプリッシュ。ガーランドが心配している事は私とて心配なことなのだ。貴方の結婚は私としても非常に嬉しい。貴方には幸せになって欲しいからこそこうして聞いているんだ」
「えぇ…ライトまでどうしたんだよ…。そんなに心配しなくても相当強い冒険者だから大丈夫だって!」
「冒険者なのか…どう思うガーランド」
「儂は許さんぞ。そんないつ死ぬかわからない職業のやつを認められるか」
「同感だ」
「いやいやいや、お前らもあんま変わらないし!そもそもおっさんとライトから認められないといけないって初めて知ったし!大体おっさんとライトそんなに仲良かったか!?」
「今はそこは問題では無い。大体私もガーランドも騎士だ。確かに命は危険に晒しているが定職にはついている」
「そうだ小娘。収入は安定している方がいい」
「いいよそんなもん。一緒に旅ができるのが楽しいんだからさ」
「ちっとも良くない!苦労するのはプリッシュ、貴方だ」
「そうだぞ、大体相手の親には会ったのか」
「いや、相手は天涯孤独なやつでさ。まぁ、俺も知り合いっていう知り合いや身内もいないから式もしなくてちょうどいいかなーって」
「は、式をしないだと!?」
「しないつもりだけど?」

その瞬間今まで捲くし立てて声を荒げていた猛者は不機嫌になり、ライトは更に眉間にしわを寄せて黙ってしまった。プリッシュは結婚を反対されるわ、式を上げろと言われるわで意味がわからず口を閉ざした。久しぶりの再会を懐かしめだとかドレスを褒めてくれよだとか、そういった所謂現実逃避をしながら2人の沈黙が破られるのをプリッシュはひたすら待った。

「…式は挙げなさいプリッシュ」
「だーかーら、親族がお互いにいないしそんなに友人とか上司もいないからいいんだって!」
「何を言っておる!儂達が行けばよかろう!秩序と混沌合わせて20人以上いよう。少しは華やかな式になる」
「おっさんさっきからキャラ違いすぎて怖い!」
「ガーランドの言うとおりだ!コスモスそれでいいだろうか?」

急に話を振られて女神はびっくりしつつも普段のその落ち着いた態度を崩さずにええと頷いた。急に決まった式にプリッシュが目を白黒させる。こんなに一致団結して話すライトとガーランドを見た事が無いプリッシュは驚きを隠す事が出来ない。
カオス勢には儂から伝えておく、必ず式をするぞと妙にガーランドはやる気である。ライトもそんなガーランドにコスモス勢には私から言おう、良い式にしなければなと満足気に言っている。
あまりに生き生きした2人を見ながら、いつの間にか隣に来たシャントットが許してさしあげなさい、はしゃいでいるだけですわと諭すので、2人に聞こえるようにプリッシュは大きくため息を吐いたのだった。





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