※毎回のことですが色々とひどいので注意お願いします。



「お前は一体いつになったら結婚するんだ。」

神殿に響いた声がガーランドの胸に突き刺さった。
目の前の勇者の腰布はうす汚れ、盾には無数の傷が付いている。ガーランドとて、剣には傷が多く付いていたし、鎧も幾分か曇っている。
神殿の床、柱も容赦なく壊されていて酷い状態だ。誰が直すんだこれ。ガーランドはできるだけ自分が直すのだという現実から目を背けた。

勇者は肩で息をしているというのに、どうしてそんな話になったのだろうか。あれか、さっき柱に叩きつけたのがいけなかったのか。頭も打ったしなぁ。
剣を構えたまま真剣な顔で勇者はガーランドを見ている。
あまりにその真剣な顔と話の脈絡の無さに思わず「お主には関係なかろう!」と怒鳴ってしまった。

「関係無くは無い。私とお前は同じ世界から来た宿敵だ。だからお前には幸せになって欲しいのだ。」

だからからの言葉の意味がわからない。もともと時々話が通じない所はある男だったがまさかここまでとは。
というか何故こちらの幸せ=結婚なのか。考え方が古いだろう。いや、儂も女性は結婚して家にいて家事をすべきとか結婚が女性の幸せだとかそう思う節はあるがそれはあくまでも女性に対してである。決して40過ぎのおっさんに対して思うことではないはずだ。

「アルティミシアはどうだ。よく一緒にいるだろう。」

何でばれてるんだ。あの場には尻尾小僧(※ジタンのこと)と黒いの(※スコールのこと)しかいなかったではないか!情報は自分の知らない所でだだ漏れである。
それにしてもアルティミシアはないだろう。もう、なんか色々とありえない。暗闇の雲よりは人間よりだが(彼女は人ですら無いのだ)でもそもそも比較対象が間違っている気がする。幸せな結婚生活とか、アルティミシアとでは無さそうな気しかしない。
本当にどうしてその選択なのか、本気で儂に幸せになって欲しいと思っているのか問いただしたい。じっと、呆れたような、どう返事をすればいいかわからない気持ちで、相変わらず剣と楯を構える勇者を見る。

「すまないが、私は無理だ。確かにプレイヤー=主人公の形を取った作品ではあったから、私が女性でもある可能性も捨てきれないが残念ながら私は男だ。」

そう言う勇者の言葉にガーランドは本気で腹が立つと脳が冷静になるのだと知った。いっそ憐れみすらこの勇者には感じる。
どうしたんだ、本当に。絶対ウジあたり脳に湧いている。頭をぶつけたくらいでこうなるはずが無い。そのウジを一匹ずつ取ってやるのも宿敵の役目だろうか。それならウジを潰してやるから早く元の勇者に戻って欲しい。

「確かにお前はいい男だ。介護くらいならしてやってもいい。でも家庭は持っておけ、その方がお前の将来のためでもあるんだ。」

剣を構えた勇者が戦場でラスボスに言う言葉では無い。ここは役所か、それとも親戚同士の久しぶりの会合か。いやどっちでも無い。戦場なんだってば!介護とか家庭とかここをなんだと思っているんだ、次の瞬間首がふっ飛ぶかもしれないんだぞ!それなのに、なにこのほのぼの感!

「それではコスモスを紹介しろ。」
「だが、断る。」

無駄だとわかりながらした提案は早々に却下された。おのれ。言葉に続けて剣を大きく振るって勇者へ攻撃を打ちだす。それを避けた勇者からの攻撃でまた何事もなかったかのように戦闘が始まった。

これでいい、甘さや優しさを取り除いて初めて見える世界もある。できることなら、今の会話は元の世界に戻って記憶から消えているといいとガーランドは切に願った。





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