※12回目です
下品注意。

頬に触れたい。できれば口付けをしたい。彼女は元の世界でそうだったように、笑って受け入れてくれるだろうか。否、きっと怒って殴られて最悪消滅させられる。そりゃあそうだ。いくら女神のような彼女だとしてもその位の警戒心は持っていて欲しい。というか見ず知らずの男に触られ、あまつさえキスされようものなら殴り殺した方がいい。
実際に俺にされたら困るけれど、彼女の貞操を考えるとそれが正解かもしれない。

「好きなのだろう。」

星の体内で上から降りかかる声にびくりと体が跳ねる。振り向けばいつもよりずっと穏やかに笑う英雄がいた。

「なんの話だ。」

冷静に、冷静に。声にこの気持ちを表した事は無いから大丈夫だ。いつもの何を考えているかいまいちわからない男ぐらいに思ってくれるはずだ。いくら英雄といえども、人の心までは読めないだろうし。

「あの女のことだ、お前がいつも目で追っている黒髪の。」

あっさりばれていました。流石英雄。無駄に刀のリーチが長いだけの男では無い。というか、俺ってそんなに気持ち悪かったのか。控え目に見ていたつもりだったのに、全部ばれているとか恥ずかしすぎる。それが憧れも含み、何度も殺し合った英雄なら尚更恥ずかしい。今ここで頭を打って記憶喪失になってくれればいいのに。

「はっきりと言ってやればいい。愛していると。」
「言えるか。」

一応亭主関白ですから。そんなデレとか出せるか、恥ずかしい!俺はお前みたいに臭いセリフを何の葛藤も無しに言える人間では無い。

「そんな調子でよくあの娘と同棲できたな。セックスもしていたのだろう?」
「セッ…!」

なんてことを言うんだこの男は。本当に英雄か。いや、まぁしていないわけではないが、それはこの異世界で言うことか!?そもそもセフィロスはあんまり記憶を持っていないはずなのに、なんで変な所詳しいんだ。本編でも知らないはずだろ。ああ、顔が赤くなるのを止めることができない。

「それが23歳の男の反応か。その位の年だと、コスプレとか軽いSMとか道具とかにも興味を持って手を出していてもおかしくないだろうに。」

23歳とか年齢は関係ないと思います。5年はビーカーの中にいたし。それよりも今さらっと英雄の口から洩れた言葉が気になる。気になるけれど聞いたら終わりな気がする。確かに英雄だし、顔も美形だから変な性癖位なら持っていてもおかしくないのかもしれない。SMならまだしも(それでも極力想像したくは無い)、死体愛好家とかペドだったら本当にどうしよう。今回は同じ勢力だというのに、味方のはずの英雄がものすごく怖いです。ラスボスの時でもこんなに怖くは無かったと思う。

「変な想像をされると不快だから言うが、私は普通だ。」
「そうか…。」

なんだろう、この嬉しさと疲れが一緒に来た感じ。とりあえず英雄が普通で本当によかった。次に戦う時に死体愛好家やペドだったら剣を向けても、躊躇いが生じる可能性が高い。いやそういった性癖の人を差別するわけではない。そしてできるだけ次戦うことは避けたい。しかしこの英雄だけはわからないのである。殺しても戻ってくるとか反則です。エアリスは戻って来ないのに。それにしても戦いも12回目を迎えるといかに精神力が鍛えられた英雄をもってしても、こうも壊れるものなのだろうか。それとも素なのだろうか。あんまり素のセフィロスと話したことが無いから正直わからない。結構真剣に元の世界ではセフィロスと対峙して親や好きな女の子の仇にまでなった男の事をあまり知らないのだ。今では、あまり知りたくないということも大きいけれども。

ああ、あの娘に触りたい。あの長くて柔らかい髪を撫でてキスしたい。緩やかに彼女を抱きしめて、その腕で体を抱きしめられたい。そうすれば、この英雄との不毛な会話も楽しむ余裕ができるはずなのに。



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