※でぃしでぃあ世界で宿敵同士がルームシェアをしていたら、という設定。
それ以外は本編と基本的に一緒。



【勇者と猛者の場合】


家に帰ると鎧を脱いで、ラフな家着に着替える。ジャージという服が作業に向いているとティーダから教えてもらって以来、ライトの家着は青いジャージだ。最初は変わった形状をしているその服にためらいもしたが(少なくともライトが思う服の形状では無かったためだ)慣れるとどうにも動きやすい。本当はこの服を結構気に入っていることはライトだけの秘密である。

ジャージに着替えると、洗濯物を取り込みに行く。溜まっていたそれらは随分多い。今日は晴れということもあり、干していた2組の布団も取り込む。とりあえず部屋に取り込んだそれらを尻目に、ライトは風呂場へと向かった。
風呂の掃除をてきぱきとこなし、蛇口を捻って湯を張る。そしてまた洗濯物をたたみに行く。ライトにとってこの一連の動作は慣れたものである。普段は夜遅くに帰ることもあり、中々洗濯物も安心して干すこともできないが、今日は夕方に帰ることが決まっていたのでこうしてゆっくり洗濯することもできた。
日の匂いする布団に顔を埋めてライトは大きく息を吐く。常日頃は戦いに身を置く戦士であるが、ライトにとってこうした穏やかな時間は愛しいものの一つだった。

「今、帰った。」

リビングの扉が開き、入って来たガーランドと布団を抱きしめたまま顔を上げたライトの目線が合う。一瞬の沈黙の後、ガーランドが着替えてくると言って扉をまた閉めた。今のは流石のライトでも少しだけ恥ずかしい。自分は光の勇者らしかっただろうか、この同居に緊張を持ち込むべきではないとわかっていてもライトにも建前や誇りというものは存在する。下らない男のプライドだと知りつつもまだ若いライトにはその感情を制御しきれない。しかし、ガーランドというのはなかなかできた人間らしく、そういったライトの若さも受け入れ、流してくれるだけの器はあった。それもこうして同居するようになってライトが知った宿敵の一つの形である。


ガーランドがリビングに着替えて戻ってくると、そのまま台所へ向かった。家事はライトが掃除と洗濯を担当して、ガーランドが炊事を担当している。最初こそ2人ともばらばらだったものの、ライトが料理=焼くということしかできないことがばれた日から家事は分担するようにガーランドが決めた。どうでもいいことだが、ガーランドもこの家ではジャージを着用している。やはり遊びに来たティーダにライト共々陥落させられたのだ。ライトは多分ガーランドもその動きやすさに負けたのだろうと想像している。ちなみにガーランドのジャージは濃紺である。
洗濯物をたたみ終えて、ライトは台所からする肉じゃがのいい匂いに気付く。台所に入れば、前の日に仕込んでいたのかほとんどの料理が出来上がっている。ガーランドは真剣そうな顔で煮物と焼き魚を盛り付けをしていた。それを見て、ライトは茶碗や箸を並べていく。炊事の中でもこれだけはライトに許された仕事だ。ガーランドは特に煮物を作るのが上手い。素直にその腕前を褒めた時、ガーランドは酷く顔を顰めたが、その顔に照れが混じっていたのをライトは知っている。その顔を思い出してガーランドに気付かれないように静かに微笑んだ。本当に平和である。
そうして、いつも通り少し早い2人の夕飯が始まるのだ。


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