※エンディング後


それはルーネスがふらりと一枚の手紙を仲間達に持ってきたのが始まりである。

「企画書?」

アルクゥが読む書類をレフィアが覗き込む。既に先に目を通したイグニスは難しそうな顔をしていた。その隣でルーネスが楽しそうにしている。

「それで、新しい企画に3からも誰か代表を出さなければいけないのね。」
「イグニスと少し話したんだけど、俺達には1人の主人公っていないじゃん?だから3らしいキャラを出したらいいと思うんだ。それを皆で考えようと思って。」
「いいんじゃないかしら。問題はどういったキャラが3らしいか、ね。」

世界を救った光の戦士達がこうして一同に集まることはありそうであまり無いことだった。それぞれ互いの生活が忙しくて会えなかったのだ。こうして全員で何か1つの問題に取り組むのも久しぶりで、それすらルーネスには幸福に見えた。

「騎士らしくあって欲しいな。」
「でも黒魔法も使える方が便利だよ。」

この旅で随分アルクゥは大人になった。以前はルーネスが守ってやらないと心配だったのに、いつしか自分の意見をきちんと言えるようになり、今では王子をサポートする立場にまでなった。イグニスも頑固な性格を少しずつ直しているようにルーネスには見える。旅の序盤ではルーネスの冗談1つでよく大喧嘩になったものだ。その度に最終的に2人揃ってレフィアに叱られて、時には1人しかいない白魔導師である彼女から回復して貰えなかったり、夕飯のおかずを地味に減らされたりした。そして耐えきれなくなって2人して彼女に謝りに行くのだ。一番可哀そうだったのはアルクゥで、この喧嘩に一番おどおどしていたのも彼だった。あの時は本当に気の毒なことをしたと思う。

「騎士で、黒魔法ができればいいんじゃない?どちらにしても女の子には優しくなきゃ。」

レフィアをそっとルーネスは伺う。話の内容こそ無茶振りではあるが、彼女の気の強さには優しさが段々と加わったように思う。それに彼女は随分と美しくなった。エリアやサラ姫のような美しさとは違う、生命の強さを含んだ美しさだ。ルーネスはずっとそう思っていたのだが伝えたことは未だに無い。多分パーティの中では自分がそれを言いやすいのだろうけれど、それを言ってしまうと今までのレフィアとの一種がさつな関係が壊れてしまうようで言えなかった。ああ、やっぱり彼女は美しい。こうして見ると自分以外の仲間はうまく成長しているように思えた。確かにルーネスは強くなった。ルーネスの速さと攻撃力がなければ倒せれなかった敵も多い。しかし成長しているのかと問われれば少しばかり自信が無い。

「ルーネスはどんな人が3らしいと思うの?」

3らしい人かぁ。今までの意見でできる人物でいいのではないかと思う。思うが少し面白みに欠ける気もする。これまでの意見で出たのは各人の特徴にも近い。それならば、ここではルーネスの特徴を出すべきではないのか。

「…生意気なやつかな?あ、お調子者っていうか、要領がいいっていうか。」

その言葉を聞いて3人が同時に噴き出した。そんなにおかしなことを言っただろうか。イグニスとアルクゥが笑いからようやく脱し、ルーネスを見た。滞っていた空気が流れ始める。レフィアに至っては未だに肩を震わせていたが、それもいつものことではある。

「お前らしいな。」

イグニスが優しくそう言うとアルクゥも頷いた。ルーネスらしいと笑うアルクゥはこういう時だけ要領がいい。多分本来はずっとルーネスより器用なのだ。

「そうね、私達は貴方がいないのとここまでこうして笑って来れなかったもの。貴方の明るさは必要だわ。」

お調子者すぎるのはどうかと思うけど、とレフィアが繋げる。ルーネスはその言葉にむっとしながら、やはり皆と同じように笑った。ルーネス自身が成長しているかどうか、正直今のルーネスにはよくわからない。それでも、このルーネスなりの強さが仲間達に、世界に光をもたらしたことに少しは役に立っていると知っている。酷いなぁ、ルーネスがそう呟くとまた場が暖かくなった。


自分達が作る戦士が、明るく仲間を励ます戦士であればいい。時には光を見失いながら、時には仲間とぶつかりながら、それでも暖かいものを手に入れることができればいい。ルーネス達が知らない世界で悲しんで、憤ってそれでも真っ直ぐ暖かい方向へ進むことのできる戦士が、この世界から生まれればいい。




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