※多分12回目


目の前に繰り広げられる戦いにどう参戦すべきかライトニングは迷っていた。正直ポーションを全部使い切ってしまった今、できるだけガーランドとは戦いたく無い。ライトニングの目の前で、カオス神殿で戦っているのはコスモス側のライトとカオス側のガーランドである。どうでもいいことだが、このライトとライトニングの名前はかぶるから正直めんどくさい。ライト、まで呼ばれたら一瞬自分かと思ってしまうじゃないか。絶対反応はしないけれど。大抵コスモス側ではわかりやすくライトの方が反応するからこれまで問題が起こったことは無かったが。もともと、ライトニングはあまりライトが得意でも無かった。不器用な位、真っ直ぐすぎる性格は嫌いではなかったが、一緒にいるとライトニングがそういった性格であるからか、衝突してしまうことも多かった。何より、ほぼ会う度にスカートが短い、女らしい言葉を使えと注意してくる彼が煩わしかった。

ライトニングが参戦を戸惑っている大きな理由はそこにある。今ガーランドとライトは武器こそ持って対峙こそしているが、先程からずっと話をしているのである。それが一般的な、宿敵同士の会話、あるいは戦士同士の会話に相応しいものならライトニングだってこうして遠巻きから微妙な表情で彼らを見つめることも無かっただろう。というのも、先程から聞いている2人の会話は、「若い者達と価値観が合わない。」や「どうしたら違う世代とコミュニケーションが円滑にとれるか。」やら、果ては「携帯電話とは何なのか。」といった下らない、一歩間違えれば焼鳥屋で酒を飲むおっさん同士の会話が繰り広げられているのだ。何故互いに剣を構えているのか意味がわからない。それに気付いた瞬間の怒りと脱力と言ったらすごいものだったが、1人は味方ということもありライトニングは何とか耐えた。


「ところで小娘。」

駄目だった。遠巻きに見ていた事は完全にガーランドには、ばれていた。背を向けていたライトもこちらを見て小さく、おおと声を上げた。わかっているなら最初から声を掛けて欲しい。なんだこの恥ずかしい感じ。仕方が無いので2人の元へと歩み寄る。

「戦わないのか。」

そう言い放っても、ガーランドだけは苦い顔しているのが鎧越しにでも分かったが、ライトは微動だにしない。それどころか軽くため息までついて首を振った。

「ライトニング、大切なのはコミュニケーションだ。」

もうどこから突っ込めばいいのかわからない。一番欠けていそうなお前がそれを言うのかだとか、お前片仮名が苦手じゃなかったっけ、とか色々つっこみをしたかったが全て黙殺する。第一それらを羅列できる程ライトニングは器用では無かった。

「なんだ、今の会話はすべてコミュニケーションが目的だったと言うのか。」

不服そうなガーランドにライトはそうだが、と軽く言い返す。そんなものはいらんだろうとブツブツ言っているガーランドを半分無視して、それでも穏やかな目をしながらライトニングを見つめた。

「ライトニングも話に混ざるか。」

その微笑みは本当に穏やかで、いつもの辛辣なまでに相手を倒す、味方からも若干恐れられているコスモス側の鬼リーダーとは思いにくい。そのあまりの変容に耐えられなかったのはライトニングだけでは無かったらしく、先にガーランドがなんでだ!と叫んだ。その声は静かな神殿によく響いた。そのガーランドの声に紛れてライトニングの、混ざるか!という叫びも消された。ライトニングはこの短い時間の会話に非常に疲れていた。今ならガーランドの気持ちがわかる。というか考え方は多分このカオス勢リーダーの方が近いという気がする。コスモス勢リーダーはなんというか、もう駄目かもしれない。話が通じないのだ。いや、通じないのは前からだったか。まともな会話もできる分、今の方がタチが悪いように感じられる。ガーランドの苛立ちがこちらに伝わってくる。ここまでライトのマイペースに巻き込まれているのは、多分ガーランドが真面目な騎士であるからだと思う。彼の中できっと今は戦闘パートでは無いのだ。その線引きが正直よくわからないが、戦う気が無いガーランドというのもなんだか珍しい気がする。このめんどくさい話の通じないライトにガーランドが当たったことはもう事故だと思った方が納得しやすいのにと、ライトニングは同じ不器用同士、ガーランドを憐れんだ。とにかく、今は戦闘はできるだけ避けたい。会話で何とかこの場を繋げることができればそれに越したことは無いのだ。そのためにはこの憤るガーランドをフォローしなければ。

「意外と仲がいいんだな。」

改めて言うがライトニング自体も相当な不器用な性格である。ライトが極端にマイペースなためわかりにくいが、ライトニング自身も人間関係はあまりよくない。まずいと思ったその時には、既にガーランドは更に暗い雰囲気になったが、ライトは気にせずにそうだな、と平然と言い切った。お前達宿敵じゃなかったのかと思いっきり突っ込みたかった。それをライトも悟ったのか、また穏やかな顔でライトニングを見た後にガーランドの方を向いた。

「元の世界に戻っても、もしかしたら記憶があるかもしれないだろう。それなら殺伐とした会話ばかりするのは好ましくない。」

真面目な顔でそう言い切った彼に遂に、ガーランドがキレて、地面をその剣で叩き割る。そこからの連続攻撃はその武器の重さに比べて驚くほど速い。寸での所で、その攻撃をコスモス勢2人はざっと避ける。ライトニングは大きく後ろに退いて距離をとるがライトは、ガーランドの攻撃に耐えながら、話せばわかる!と叫んでいる。そんなライトをライトニングはちらりと見て溜息を深く吐いた。

お前どんだけ、不器用なのかと。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -