金の緩やかな髪、赤い唇、首から胸元に見える白い肌を見ながら、ライトニングは、ああ、この娘はなんて綺麗なのだろうかと考えていた。
しかしその少女の右足だけが不自然に赤く腫れている。最初に見つけた時は警戒もしたがこの魔導師は今に至るまで攻撃をしてこない。座る彼女からは戦意も殺意も感じ取れないのだ。

「…大丈夫か?」

思わず声を掛けてしまった。掛けるつもりは無かったが感情の無さそうな少女から少しだけ怯えが読み取れた。昔からこの手のタイプには弱い。守ってあげたくなるタイプは生まれてこの方ずっと守って来た自負さえある。

「ティナだったな、立てないのか。」

ティナはライトニングを目で確認すると軽く頷いた。そのあまりにもか細い仕草がライトニングの保護欲を刺激したのは間違い無かった。彼女がこの距離で魔法を撃たないことにライトニングは強い警戒心を解き、右腕を上げた。同時に湧き起こる光がティナの白い足を撫でる。すうと引いていく赤い痣を見ながらライトニングは満足そうに顎を引いた。
ティナはずっと表情を変えずにいる。そのあまりの無表情さに戸惑うものの、迷いをライトニングは見せない。私は。とティナは言葉を紡ぐ。

「私は魔法で人を殺すけれど、あなたは人を癒すのね。」

ティナの口から出た言葉にライトニングは眉を顰めた。がちゃりとガンブレードを持ち直す。銃と刀が交わった剣は鈍い光をみせる。私だって、ライトニングはそう言い掛けるのをやめる。

「白魔法は使えないのか。」

ティナも右腕を上げた。少しだけ握ったその腕に小さな氷が現れ、続けて現れた炎に一瞬で蒸気にされた。私はこれだけ、とティナは言った。

「私はそれすら上手くないが。」

機嫌が悪そうな言い方はティナには皮肉と取れたようだった。少しだけ困った顔をしたティナにライトニングは口元だけで笑う。私はこれだけだ、担いだガンブレードを少しだけ傾ける。

「私だって、人をたくさん殺した。」

何気なく紡がれた言葉にティナが同じね、と微笑む。このようにこの娘は笑うのかと、ライトニングが驚いていると、ティナがすっと立ち上がり近づいてくる。その俊敏な動きについていくことができずにいると、頬に暖かい感触が触れる。ああ、キスをされているのだと脳では冷静に判断していた。ぼうっとしていた。

「次の世界では殺し合わなければいいのにね。」

ティナの言葉が物悲しい。ライトニングはゆっくりとガンブレードをティナへと向ける。


キャッスル・イミテイション


ああ、私達はこの世界では殺し合うしかない。


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