*ACあたり



セフィロスが目を覚ますと、川の近くにいました。まず左手を動かします。動くのを確認したら次は右手、そのまま上半身、下半身まで傷が無いか上手く機能するかを確認しました。

確認が終われば、周りを見渡します。緑色の川が続いています。川のこちら側には少々の雪と黒色の岩石が転がっていましたが、川のあちら側は全く見えません。霞んでしまっているのです。セフィロスは妙に懐かしい気分になりました。すぅっとします。時間の流れがまったく掴めませんが、ここには長くいたのだろうと彼は思いました。それにしてもどうして今になって体が戻ったのでしょう。少し前までは体など無く、もっと大きな流れの一部だったというのに。

あちら側から声が聞こえてきます。騒がしい声です。人のものもあればそうでないものも多いようでした。目を瞑ります。更に火薬の匂いや血の匂いが強くなりました。私は呼ばれていると直感的に英雄は思いました。しかし彼は川のあちら側に行くべきではないと感じていますし、行きたく無いとも思っていました。きっと行けば苦しみに満ちた世界に行くことになります。こちら側には親友がいて、本来の母親もいます。彼は急に満たされた世界から追い出されました。とても悲しい気分です。

また、声がしました。たくさんの叫び声や爆弾の音、建物が倒れる音がします。心底セフィロスはその音を聞くのが嫌になっていましたが、苦しむ恩人の声を人よりも鍛えられた耳で聞いてしまいました。また、彼は悩んでいるのでしょうか。自分を責めすぎているのではないかとセフィロスは心配になってきました。

確かにセフィロスは彼、クラウドに2度殺されました。2度殺されるという言葉はおかしいのですが、事実でもあります。セフィロスは1度死んだ後に蘇ったことがあるのです。最初ここに来た頃のことは今でも覚えています。あの時は悔しさや驚きの方が今よりずっと大きく、体をもう一度この川の側で手に入れた時は心から感謝したものです。

しかし、夢は徒労に終わりました。そもそも何故蘇ってまで母親のために尽くしたかったのでしょう。セフィロスはきっと自分は自分でありたかったのだと今は思っています。モンスター等では無く、ましてやジェノバでもありません。セフィロスはこの体に流れるジェノバ細胞のおかげで力を得たのも確かですが、それでも自分だからこそ英雄の地位につけたのだとも思っています。

英雄を、人を捨てたセフィロスをクラウドは止めてくれました。それはセフィロスのことを思ってでは無いのかもしれません。それでもセフィロスはクラウドは許されるべきだと思っていましたし、自分の存在によってクラウドが苦しめられたとしてもそれさえも乗り越えて行って欲しいと考えていました。

死んだ神羅の英雄にはもうこの位しかできることがないのです。奪ったものが多すぎましたし、今でも彼は自分を見たら嫌悪することも、嫌悪される形でしか接することもできないことも知っています。

セフィロスはため息を吐きました。戦いたく無いと心底思います。しかし、川の向こうには恩人がいます。体と共に再形成された正宗の重さが心地よくてなんだか笑ってしまいそうになります。

川に足を沈めれば、一気に向こう側が見えてきました。少しだけやはりこちら側にいるべきだったと後悔しました。倫理を超えた存在になると戻るのが難しくなります。中々あちらにいけないように、中々こちらに戻るということも難しいのです。できればこんな想いはこれで最後だと助かるなぁと思いました。心配性の自分にも困りものだとセフィロスは彼が英雄だった頃の顔で苦笑しました。


リバーリバーリバース


それでも、セフィロスはまた喚ばれれば川を越えてでも助けに行こうと決めているのです。


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