夢を見た。いつもの自分の部屋へ続く道。薄暗くて、人工の明かりだけが眩しくて夜を感じない世界。ずっとこの世界が嫌いだった。何故ここにいるのだろうと何度も思った。その場所で戦略を練ることは好きだったが、ふと明るい世界を思い出すとここにいることは結局嫌いでそれでも外の世界には行く勇気がない自分が惰性で暮らしていただけの空間なのだと思う。

「久しぶり、クジャ。」

笑う金髪はいつだって明るく、優しい。これが、この人物こそがあの世界での希望だった。

「ジタン、来たのかい。」

いつだって明るい君が羨ましかった。周りに仲間がいる君が羨ましかった。声をあげて笑う姿が、噛み殺して泣く姿が羨ましかった。自由な姿が羨ましかった。なにより、命が長いことが羨ましかった。

「ああ。」
「君はどうして来てしまうんだろうね。」
「助けられたからだな。」
「助けられた?」
「ああ、お前に助けられたんだよ。クジャ。」

 ジタンに名前を呼ばれるとどこか懐かしい気持ちになった。助けただろうか、そんな記憶は無かったが。むしろ助けられてばかりだった気もする。

「覚えてないかもしれないけどさ、テラで、そしてこの世界でも助けてくれた。なぁ、あの世界に帰ろう、クジャ。お前の側には俺がいる。それじゃ、駄目か?」

 世界の記憶が急速に戻ってくる。不安も悲しみも鮮明になっていく。そうか、僕がずっと抱えていたものはこれか。暖かい、何物にも代えられない、この。

「僕はね、ジタン。君にこんな醜い姿は見せたくなかった。そしてこれからも見せたくないんだよ。」
「クジャは醜くなんかない。もしその尻尾が醜いなら俺だって醜いよ。」
「…君は変わらないね。」
「悪いかよ。」
「いや、安心したよ。君はいつだって強い。」
「クジャ程じゃないさ。」
「馬鹿だね、そんなことを言っているんじゃないよ。僕は怖いんだ。もとの世界に帰ったら僕は…。君がそばにいてくれるのは嬉しいけど、きっと僕も君も辛い。だから僕はあの世界には帰れないのさ。」
「クジャは馬鹿だな。」
「馬鹿って、酷いじゃないか。君よりはましだよ。」
「うっせ!いいか、クジャ。辛いとかそんな感情はどうだっていいんだ。クジャの傍に俺はいる。それだけだ。」
「わかったよ。もし、君達がカオスに勝ってもとの世界に戻れたら、僕の傍にいてくれ。そうしたら僕はきっと幸せだろうから。」
「ああ、必ず。」
「ああ、なんだかとても疲れてしまったよ。少しだけ僕は寝るよ。」
「ああ。」
「ああ、ジタン。君に出会えて、君に触れることができてよかった。君がいなければきっと僕は僕でなど、ありたくなかったよ。」


さよなら、さよなら


そんな僕にジタンは優しくにっこり笑うので、僕は心底幸せな気持ちで目を閉じたのだった。


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