次の日曜日に兼続と会うことになり、左近と政宗、幸村は神社の一室で彼を待っていた。政宗の仕事の早さにも驚いたが、それ以上に待ち合わせ場所が神社であることにも左近は驚いていた。話を聞けば兼続の本職は警察官だが、家業で神主をしているらしい。隣を見ればいつもと変わらない政宗と少し緊張気味な幸村が並んでいる。

「待たせたな!」

すぱんと襖を開けて兼続が現れた。え、これで記憶無いとかなくないですか。左近の目には現代の兼続も過去の兼続も同じに見えた。というか同じだろ、これ。幸村がおお…!と懐かしそうな声をあげているのが何よりの証拠だと思う。

「静かに出てこれんのか。相変わらず暑苦しい。」

姿こそ神主姿だが容姿は左近が知る兼続とそう変わらない。その相変わらず、細く骨ばった手がとん、とおはぎを左近達に(正しくは幸村にだろうが)差し出す。

「幸村が好物だったからな。それと上杉の名物といえば米と酒。存分に味わってくれ。」

明らかに記憶がある兼続に左近は軽く絶句する。なんだこの昨日もあったような馴れ馴れしさ。俺と同様引いている政宗さんとは違い、幸村は嬉しそうに兼続殿!と叫んで兼続に近寄った。うん、よくわからないけど、俺や政宗さんより幸村の中では兼続さんの位はずっと高いらしい。それは割りとどうでもいいのだが、隣にいる政宗さんはいらいらしてるし、俺としても幸村と兼続さんの長話に最後まで付き合う気はない。こういうと人でなしのように聞こえるが、幸村と兼続さんの会話が開始一分にして全く関係の話題になることを、俺だけでなく政宗さんでさえ知っている。今だって少ししか話していないというのに、何故か近所の安いスーパーの話になっている。数百年会わなかったのに、すぐこれか!お前達は主婦か!そう言いたい衝動を必死で抑える左近の隣で、政宗が馬鹿め!と立ち上がった。

「相変わらず話をすぐずらしおって!もうちょっと情緒というものを持てんのか。そもそも今回は左近が用が合ってきたのだ。主賓を蔑ろにするとは貴様、本当に義を大切にしているのか。」

憤る政宗に目もやらず、すまなかったなと兼続は左近の目の前に歩み寄る。そして一通の白い封筒を差し出した。兼続のその急な行動と宛名も差出人も書かれていない封筒に左近は驚いきつつ、封筒を受け取った。

「その中には三成を知る人物の住所が書かれている。直接三成に繋がる者ではないが、きっとよい助言をしてくれるはずだ。それに左近も急に三成と会うとなると何を話していいかわからんだろうから、その人達をゆっくり辿っていけばいい。」

兼続の三成を探す早さに左近は目を開く。以前から知っていたのだろうか、それにしても早い。この短い時間に兼続の有能さ、左近への配慮に感心する。政宗の言うように兼続はかなり記憶がある方なのだ。多分それも左近とは違い、長い期間付き合ってきたものなのだろう。自分もこんな風にいつか記憶と向き合える日が来るだろうか。左近は封筒を開けながら考える。

「ちなみにそれって誰なんですか。」
「竹中半兵衛だ。」

接点無ぇ、左近が思わず呟いた言葉に兼続の後ろで若い二人が静かに深く頷いた。







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