約束しようと、彼は言ったC



エプロンを取り外し、制服姿になった幸村がやって来た。バイトは早めに上がらせてもらったんです、と嬉しそうに言って政宗の隣に座った。その幸村に政宗がお冷やとお手拭きを渡すと、幸村はそれを受け取り手を拭き、先程自分で焼いたお好み焼きを夢中で食べて始めた。それを政宗が落ち着いて食えと諭している。その単純な高校生らしい仕草をする二人を見て左近は柄にもなく和んでいた。何度か殺し合いを二人は前世ではしただろうに、この世の中ではこんなにも仲がいい。

「そういえば、お二人以外にも記憶を取り戻している方はいるんですか。」

お好み焼きに齧り付く幸村では無くそれを横目で見ている政宗に尋ねる。

「そうじゃなぁ…。儂の知り合いで記憶を持っているのは孫市位かの。しかし、奴も断片的にしか持っておらん。あとは知り合いに甲斐姫や半蔵あたりもおるが、記憶は持っておらんな。」
「結構、知り合いにいるものですねぇ。」
「幸村の知り合いにも、くのいちだとか忠勝がいるが記憶は持っていないのだろう。」

肯定するように幸村は頷いて、口の中にあるお好み焼きを飲み込んだ。

「あとは慶次殿も知り合いなのですが、記憶を持っているかいないかが微妙なんです。」

へぇ、慶次さんまで!と左近が感心していると、途端に若い二人は俯いた。慶次かぁ、慶次殿ねぇ。二人の会話はどこか重たい。慶次さんがどうしたんですか、と左近が聞けば幸村が慶次殿は以前と一緒でとてもお強いんですが、と歯切れの悪い返事をした。その後をやはり暗い顔をした政宗がただ、定職についておらんだけじゃと言葉を繋いだ。

「いや!慶次殿は長距離運転手というちゃんとした職についておられます!」
「馬鹿め!同時期に的屋もしていただろうが!それより、儂としてはその道に入ったのではないかと心配でな…。」
「ええっ!慶次殿に限ってそんな…!」
「天職に、思えますがねぇ。」

思わず口にした左近の言葉に、幸村は絶望を、政宗は怒りを顔に浮かべた。これはまずいなぁ、なんだかんだで慶次は彼らからとても慕われているのだ。

「ふん!そんなことを言えば三成の方こそ、その道に入っているかもしれないではないか!」
「確かに…前線は無理でも、三成殿のことだ、経理あたりに入ってるかもしれない…。」

あまりの若い二人の言い様に、左近は年上ながらも少し腹が立った。自分のことなら笑って済ませることができる。しかし対象は自分では無く、三成だ。敬愛する殿のことを馬鹿にされたまま黙っておけるほど、現代の左近は大人では無かった。

「お二人共、言い過ぎですよ。殿は前線でも充分に戦える人です!」

二人の若者がなんとも言えない空気のまま押し黙り、お好み焼きを頬張るの再開させたのを見ながら、この時代の三成を堅気の道に戻すことが彼と会って始めての仕事にならないように、左近は祈った。





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