ドフラミンゴがソルを拾った経緯と言えばだ。

人攫いに攫われた子供が警戒心もなく周りの大人に引っ付きまわり、哀れむ目に首を傾げ、ここはどこだという問いに同じく攫われた大人が噛み砕いて噛み砕いて説明してやれば「ドフラミンゴ?」と説明に含まれていない単語を口にしたのが切っ掛けであった。

たまたまそれを聞いた部下が知り合いであれば大事だと連絡を入れればたまたま暇を持て余していたドフラミンゴが興味を持った。そうしてあれよあれよと顔を合わせた子供は例のごとく歓声を上げてドフラミンゴは大いに笑った。

どこかの回し者かもしれないし能力者が化けているのかもしれないが、きゃっきゃきゃっきゃと喚く子供は元来賑やかを好むドフラミンゴの眼鏡に適いひとまず人身売買の魔の手を逃れた。

現状を理解しているのかいないのか、純真を象ったような視線に一日かけて構い倒したドフラミンゴは、子供の発した「クロコダイルは?」の一言にピンと閃いた。

不思議な事にドフラミンゴだけでなくディアマンテやバッファローやジョーラの名前まで知っていたこの子供に一部の部下は警戒心を解いてはいない。回し者ではないかという説は一晩過ぎても有力ではあるが回し者ならばそんな尻尾を出すかというのがドフラミンゴの見解である。

別にこのまま手元に置いても構わないのだが、遊ぶのはいいとして世話を見るのは嫌だという自己中心的な理由の元、ならば面白そうな奴に押し付けてしまえという短絡的な結論をはじき出した。仮に詰めの甘いどこかの回し者であったとしても自身に被害はないし、ただの面白いガキならば遊びたいときに遊べる。そうだそうしようと思いその足で名の出た男の拠点へ向かった。

事情を説明すればきっと砂嵐に襲われるので、さっさとおいて帰ればどうにかなるだろう。

そうしてクロコダイルとソルとの出会いに至るわけではあるが、ドフラミンゴはその事実を円卓に憮然と腰掛けるクロコダイルに伝える気はない。

殺されても構わないぐらいの気持ちで渡したのだが意外と可愛がっているらしいと小奇麗な服に身を包んだソルを構い倒し、いつも通り機嫌よく笑みを零した。

「フッフッフ、ソルは気に入ったか?鰐野郎」

「黙れクソ鳥」

「ふっふっふー」

「やめろソル」

愛用のピンクのコートにまとわりつきながらドフラミンゴの真似をするソルにクロコダイルが目をかっぴらき青筋を浮かべたのを見てドフラミンゴはさらに笑った。後ろの海兵が怯えているというのに動じない子供も子供だが、はーいと気持ちのいい返事をして突進する子供を受け止めるクロコダイルもクロコダイルだと、やる気なく腰掛けた椅子の上で足を組み直し、黙りこくっていた元帥へくだらない講釈でも聞いてやるかと向き直った。

「ソル、少し大人しくしてろ」

「はーい」

子供を膝の上に座らせて会議に臨む王下七武海。子供を出せと注意されないのは果たして何故か。疑問に思っても誰も口には出さなかった。

赤犬あたりがいの一番に苦言を呈しそうな物なのにと、何ともいえない表情のまま動かないサカズキを見やり、動物園だね!と控え目に聞こえた笑い声につられて小さく笑う。

鰐に鷹に熊に蛇に犬に猿に雉に鳥に、確かに動物園だ。