「ばいばーい!!」

小さな体をめいっぱい使って手を振るソルを、まるで今生の別れかのように噎び泣きながら見送る白ひげの息子達。悪夢じみた光景に心底げんなりしながら、クロコダイルは気だるさのままに紫煙を吐いた。

「楽しかったー!また会えるかなー!」

「さぁな」

肉眼では個々の区別がつかなくなるまでその手を振り続けた子供はようやく満足したのか、乗り出していた欄干から体を戻し、いつもの要領で無邪気に破顔した。

「クロコダイルといると楽しいね!」

憮然と葉巻をふかしていただけだというのに、その言葉にクロコダイルは思わず子供の顔をまじまじと見下ろす。

唐突に向けられた正面からの視線に、笑顔のまま固まった子供はこてりと首をかしげたが、その顔にクロコダイルはそっと視線を細めて小さな頭に手を置いた。

「クハハ…そうかよ」

「うん!」

ぐしゃぐしゃに髪を乱されながらも破顔した子どもの目に、クロコダイルが映り込んでいた。

ソルの頭から離したその手でクロコダイルは自身の首筋をさすりながら深く紫煙を吸い、吐いた。