ところでだな、とおもむろにクロコダイルの横に腰を下ろした馴れ馴れしい不死鳥にぎろりと睨みを聞かせてみるが、残念ながらクロコダイルの眼力は人を殺すに至らないらしい。誠に残念だ。

酒の瓶片手に、お前も飲むか、なんて間の抜けたことを言った不死鳥はようやくクロコダイルの手元の酒に気付くと、悲鳴のように俺の!と叫んだがクロコダイルの知った事ではないので聞こえなかったふりをした。むしろザマアミロである。奪い返そうとする手を払い落とし、豪快に目の前で煽ってやった。

この性悪、とは褒め言葉にしか聞こえないので悪しからず。

「ワニの名前、結局ワニ太ワニ子と一号二号どっちだよい」

ひとしきりの攻防を経て、冒頭のところでだな、を仕切り直した不死鳥が言った。因みに攻防はクロコダイルの勝利だ。

「ソルはワニ太ワニ子だな」

「…お前は?」

「一号二号」

「ペットの名前は統一した方が良いらしいぞ」

「知るか」

さて、こんなに呑気に話している横では夜襲が返り討ちにあっているのだからやはり海賊というのは物騒である。

闇夜にまぎれていたとはいえ天下の白ひげに乗り込める程の手練を、子供が寝ているからというだけで、やたらと静かに殲滅させる様はさながら特殊部隊のようだったと後に誰かが語ったとか語らなかったとか。