モビーディックに即席のカメラ小僧が現れた。ソルである。

白ひげの息子の誰かが玩具にしては随分と身の丈余るカメラをソルに与えたらしく、先ほどからこっちでぱしゃぱしゃ、あっちでぱしゃぱしゃとフラッシュがひっきりなしに光っている。

「はいチーズ!」

泣く子も黙ると言われる白ひげ海賊団の中心で、なんとも無邪気なカメラ小僧だとクロコダイルは少しばかり脱力した。日が落ちて随分と時間もたち、いい加減、子供は寝る時間である。言い方を変えるならいい加減引き上げたい。

「グラララァ、小僧にしちゃあ様になってるじゃねぇか」

「あ、白ひげもとらせて!」

「どうせなら一緒に写りなァ、俺ァ写真は撮られ飽きてんだ」

「とりたい!」

「貸しな、俺が撮ってやるよい」

はーい!と眠気のかけらも見せない子供は、まだまだはしゃぐき満々である。やれやれ。

カメラ小僧の撮影現場から記念撮影と変わった光景をスコッチを煽りながら眺め、存外気の長い自身に辟易しながら、クロコダイルはどうしてもはしゃぐことに忙しい白ひげ海賊団に一言いいたいことがある。

「クロコダイルもいっしょにとろー!」

「は」

ぱしゃり。

背後から抱き着かれ、不意打ちを激写されクロコダイルはフラッシュのまぶしさに視界が一瞬白く染まった。

「ほらほら、笑うよい!」

げらげら囃し立てて笑う男たちに青筋を浮かべることすらあきらめて、言葉を飲み込んだクロコダイルは窓の外を指さすだけに留めた。我ながら気の長いことである。

「…げ、敵船」

見張りはどうした!お前じゃねぇか!そうだ俺だ!

そんな声に、やれやれとクロコダイルは再び肩を落とした。この船大丈夫か。