きゃっきゃとはしゃぐ子供をぼんやりと眺めながら、クロコダイルはいつものように椅子に腰掛け葉巻をふかした。

コートにくるまってみたり膝の上によじ登ってみたり肩に上ってみたり飛び降りてみたり。俺はアトラクションかというツッコミはとっくに煙と共に溶けて消えた。首にぶら下がられ、流石に少し苦しいと眉を寄せてその腕を引っ張れば大人しく飛び降りる子供はとても喧しいが聞き分けだけは頗るいい。

結局あれから、大方ドフラミンゴが闇家業で拾ってきた余り物か何かだろうと見当を付け、どうするわけでもなくそのまま置いている。

きゃー!と高い声を上げながら鉤爪にじゃれる子供をブランコのように揺らして葉巻をふかした。

どういうわけかクロコダイルによく懐くこの子どもは一晩あけてもこの調子だった。

「クロコダイル!クロコダイル!」

親の後をついて回る雛のように後ろをついて回られ、部下に預けていればちょこちょこと抜け出してはきらきらきらきらとした瞳でクロコダイルの頬を刺す。

俺にどうしろと、と毎回思うのだが五回目に抜け出してきたときからもう好きにさせていた。

「俺は仕事だ」

「はーい」

そう言えばひょいっとその鉤爪から飛び降りて、ソファーにダイブする姿はやはり聞き分けはいい。どうせなら大人しくしていればいいものをと、ぼっすんぼっすんソファーで暴れる子供に溜め息を一つ。

目の前の書類に目を通してサインをして舌打ちをして判子を押して。報告書にざっと目を通して必要ならば取引相手に連絡を取り少しばかりのお願いを伝えてまた書類に目を通す。それをどれほど繰り返した頃だろうか。

「おなか減った!」

「あ?」

不意に響いた主張に時計を見た。気がつけば昼飯時を過ぎていて、ああもうこんな時間かと目処がついた書類を片隅に寄せた。

確かに腹が減ったと立ち上がればきゃっきゃとはしゃぎながら飛びついてきた子供を、鉤爪に気を付けながら左手で受けとめる。

「俺ハンバーグ食べたい!」

「ああ、いくか」

受け止めたばかりの子供をおろし部下に連絡を入れて予約を取るようにいえば、はい、と礼儀正しく返ってきた返答に電伝虫を切り再度飛びついてきた子供をまた受け止めた。

そのまま部屋を後にしてレストランで自身のランチと子供のハンバーグを注文し、子供の首元にナプキンを差し込みながらクロコダイルはふと思った。

なんで俺が面倒見てるんだ?