はしゃぎ疲れて眠ってしまった子供を眺め、その子供に腕枕をしながら寝こける不死鳥様はいつまで居るつもりだろうかとクロコダイルは呆れた。普通海賊が他所の海賊船で寝るか。

直前まで行われていた海賊王ごっこならぬ白ひげごっこが、子供と不死鳥、どちらより発案されたのかはさておき、この不死鳥は随分とこの子供がお気に入りのようだ。頼みもしないのに子供の身元を割り出してくるほどには。

頭に無かったわけではないが、気にはしていなかった親の存在。子供が帰りたがったが故にわざわざ身元を割り出してやったと言うならば話も分かるが、そもそも帰りたいと泣くような子供であればクロコダイルのほうが面倒を見る事を拒否していただろう。元来子供は好きではない。

さらに言えば、親に会ったところでどうするのだとクロコダイルは内心眉をしかめた。コンニチハ、ソル君の身元が分かったのでお返しに来ました。どこの慈善事業家だ。

胡散臭い笑みを張り付けた自身を想像して思わず鳥肌が立ち、舌打ち交じりに腕を擦る。我ながら気持ち悪すぎた。

気持ち悪いといえば、したり顔の不死鳥も実に忌々しく気持ち悪かった。白ひげに会いに来ないかとソルを誘惑した不死鳥に、会わせたきゃてめぇが連れて来いと言うより先に上がった歓声。その歓声に半ば投げやりに決まった航路。小馬鹿にしたような不死鳥の笑み。

思い出したらなんだかイラッとしたので、クロコダイルは足元で寝ていた一号をそっと不死鳥の枕元に置いた。噛まれろ。そのまま起きる気配の無い子供の腹にコートをかけソファーへと深く腰かけた。

すっかり短くなってしまった葉巻を灰皿に押し付け、最後の紫煙を吐き捨てる。

「………」

百歩譲って、白ひげに会うことぐらいは良しとしよう。気には食わないが自身が慣れ合わなければまだ許容できる。

しかしだ。

しかしソルの親に会ってどうする。感動の親子の再会に胸を温めるような質でもあるまいし、さらに言えば、その再会後だ。

「………」

クロコダイルに言わせてみれば、易々と我が子を見失ってしまう様な親にわざわざ返してやろうという善意は持ち合わせてはいない。

なんせ彼は海賊なのだ。とても質の悪い、政府公認の。