「シマの外は久々だなァ」

「だねい」

爽やかな春島の風に吹かれ、背伸びをしたサッチの横でマルコは欠伸を零した。随分と穏やかな島の様だと、先遣としてたどり着いた島で人ごみに紛れ歩く。

「随分ゴロツキが多いが、どいつもこいつも腑抜けた顔してるな」

「この陽気に毒気が抜かれえるのかねェ」

そんなワケねぇか、と言っておいて笑った兄弟分に、毒気が抜かれると言えば、と先日出くわした子供の事をぼんやりと思い出す。きゃあきゃあと騒ぎながら通り過ぎていく子供の姿にそれを重ね、この島に連れてきてやったら喜ぶだろうなぁと何気なく考えた。

「特に問題はなさそうな島だな、俺ちょっと食料の確保だけしてくるわ」

「分かったよい、俺ぁもうちょっと見て回る」

上陸可能だと電伝虫で船に連絡を入れ、オヤジに酒でも見繕うかとゆるりとサッチと別方向へ足を向けた。

本当に穏やかな島だと露店が軒を連ねる繁華街をぶらぶらと見て歩いているうちに、一際子供たちが集る店が目に留まった。なんだろうかと遠目にそこを窺えば、きらきらと陽気を跳ね返し輝く色とりどりの塊。金平糖か、と子供がはしゃぐ姿にソルを重ねた。どうやら自身は、珍しく子供に懐かれたことがえらく嬉しいらしいと一人苦笑する。

クロコダイルが今どこにいるかは知らないが、近くならば子供に手見上げの一つでも持って遊びに行ってもいいかもしれない。後で各地で航海している傘下の海賊にさりげなく聞いてみてもいい。ならば手見上げは、この島の子供に随分と人気があるらしい金平糖で決まりだろう。

「オヤジ、俺にもくれよい」

そう言って歩み寄ったその店先で、マルコは見覚えのある写真にぱちりと目を瞬いた。

いらっしゃい、と例に漏れず腑抜けた、人の良さそうな顔をした店主に首を傾げその写真を指差す。

「なァ、この子供がどうしたんだよい」

MISSINGの文字が、答えではあるが。