大空を滑空する青い鳥に砂嵐をぶつけてもいいだろうかと、少し遅れて気が付いたソルを見ながら少しだけ考えたクロコダイルは結局紫煙を吐き出すにとどめておいた。やたらと海に叩き落としてやりたくなる顔をした鳥である。

「マルコ!」

「よォ、ソル」

右手を上げ、いつかと同じようになんとも華麗な着地を披露してくれた不死鳥に、クロコダイルは諦めとも呆れともつかないため息を吐き出す。

「乗船の許可は出してねェ」

「そう固いこと言うなよい」

舌打ち交じりに文句を言ったところで、ほれ、と手見上げだと差し出された包みに歓声を上げたソルに続く言葉は掻き消される。はぁ。本日二度目のため息に紫煙が混じり、快晴に溶けた。

「金平糖だー!!」

きゃー!と歓声を上げたソルがそれを満面の笑みでクロコダイルへ掲げて見せた。良かったなと紫煙を吐き捨て、クロコダイルは何か言いたげなマルコを見る。

「…もう一つ、手見上げだ」

要らねェ世話かもしれねェが、と差し出された紙がマルコの手からクロコダイルの手へと渡る。訝しさを隠すこともせずに折りたたまれたそれを広げ、クロコダイルは何とも言えずにもう一度マルコを見た。

そこに写る、満面の笑みではしゃぐ子供の姿は、見間違えるまでも無く目の前で金平糖を頬ばる子供だ。

「クロコダイル!ワニ太とワニ子にもあげていい?」

「…やめとけソル」

「いつの間にペットまで増えたんだよい。俺にも触らせろ」

「噛むぞ」

「マジか」

ああ、噛まれても不死鳥かと零せば気分的にイテェよいとマルコはソルを構いにクロコダイルの傍を離れた。

手元に残った紙をもう一度見やり、握りつぶして海に捨てる。

「本当に、要らねェ世話だ」