ワニも躾けられるもんなんだなぁ、とクロコダイルがなんとなく感心する横でソルとバナナワニの子供が二匹、ぐーすかと呑気に寝ている。

最初にがじりといかれて以来、少しの殺意を込めて威圧すれば存外あっさりワニは大人しくなった。二匹目に至っては出会い頭で脅したのでクロコダイルには本当にワニか疑わしいほどに従順である。

本当にワニか疑わしいといえば、こうやって無防備に子供と昼寝をする光景も妙なものだ。

硬いワニの背を枕に熟睡する子供は本当に危機感や警戒心の類いがない。読み終えぬ報告書を前に火を着けぬままの葉巻を指先で弄びながら、くあ、と欠伸を一つ零したクロコダイルが葉巻を置き椅子から立ち上がる。

着ていたコートをそのままソルの腹の上に掛ければ、鼻面に掛かったコートに目を覚ました一匹のバナナワニの寝ぼけた視線が向けられた。

「…クハ」

それが無性に可笑しくて、もぞりと身じろぎ寝返りを打った子供の寝顔を眺めくつくつと笑う。寝ぼけたまま鼻面にかかったコートの裾をがじりと甘噛みしたバナナワニすら、悪くねぇなとクロコダイルは思った。

本当に、悪くない。