「クロコダイルー!」

「あ?」

「ワニ拾った!!」

「あ"!?」



急ごしらえの水槽の中をちゃぷちゃぷと泳ぐバナナワニの子供をぼんやりと眺め、今日も今日とて葉巻を吹かしながらクロコダイルはそのワニの子供にがじりといかれた鉤爪の傷を研磨した。このクソワニと睨みつければちゃぷちゃぷと泳ぐ子ワニはそっと遠ざかって行く。大体アバラスタに生息するはずのバナナワニが何故拾われるようなところに転がっていたのだ。子供も子供で、よくもこんなワニを抱き上げ噛まれなかったものだ。

「ワニかっけー!」

きゃー!と歓声を上げながらきゃっきゃとはしゃぐ子供に紫煙を吐き出して、連れて帰っていい?と小首を傾げおねだりする姿を思い出した。ソルに抱えられながらもクロコダイルと向かい合うやいなや鉤爪に食らいつきぶら下がったワニ。それを見てなお連れて帰りたいと言うかと思いもしたが、きらきらきらきら、いつもの目に見上げられた結果今に至る。お前世話できないだろうが。俺がんばるよ!今日もどこかの道端で繰り広げられていそうな会話をクロコダイル自身がすることになるとは、いやはや人生とは分からないものである。

ちゃっぷちゃっぷちゃっぷ。水槽で呑気に泳ぐ子ワニが呑気にあくびをしてそれにすらソルがはしゃぎ、身長よりも大きい水槽にべったりと張り付き離れようとしない。

その後ろ頭と研磨中の鉤爪を交互に眺めながら、深く息を吐いていれば不意に思いたり研磨する手を止めた。

こういう場合、大抵後々は親が面倒を見ることになると相場が決まっているのだ。




「クロコダイルー!」

「あぁ?」

「また拾った!」

「あ"ぁ!?」