出航まで時間があると、ソルが行きたがり散策がてら出かけたマリンフォードの生活区。きゃあ、といつもよりも控えめな声にクロコダイルが視線を向ければ、ソルが露店に釘付けだった。何が売られているのかと更に視線を追えば、色とりどりの金平糖。

「食べたいのか、ソル」

「食べたい!」

いい?と子供がクロコダイルを見上げ、肩をすくめたクロコダイルが札を一枚子供に握らせた。

「好きなだけ買って来い。釣りは店主にくれてやれ」

「ありがとう!」

きゃー!と歓声を上げて露店へ駆け寄る後ろ姿を見守りつつ、葉巻きを切らした口元の寂しさに軽く自身の舌を噛む。店主が人辺りのいい笑みを浮かべ、札と引き換えにソルが両手で抱える程の袋を渡していた。

満面の笑みで駆け戻ってくる子供に、転けても知らねぇぞと言えば大丈夫だと子供が高らかに宣言する。宣言通り転ばずに戻ってきた子供が袋の中から金平糖の入った小さな包を取り出した。

「二つでいいって言ったのに、こんなにくれた!」

「良かったじゃねぇか」

右手でソルを抱き上げ、ソルが両手で抱えるその袋を鉤爪に引っ掛けて受け取れば、取り出した小包を早速開けるソル。ころりと小さくカラフルな砂糖の塊がソルの手のひらに転がる。

「はい、あげる!」

きらきらきらきら、満面の笑みで差し出された金平糖。いらねぇよ、んなもん。そう言いかけて、葉巻きを切らした口寂しさを思い出した。

差し出された金平糖に口を開けば、ぽいっと投げ入れられ口内に広がる独特の甘さ。軽く歯噛みすれば、口寂しさが幾らか紛れた。

自分の口にも金平糖を放り入れたソルが、幸せだと言わんばかりに目を輝かせ上機嫌にはしゃぐ。

「美味しいね!」

「甘ぇ」

再度放り入れられた金平糖を噛みながら、葉巻はどこで売っているのかと足を進め、見つけるまで金平糖は口の中に放り込まれ続けた。