エースの場合
ロジャーも知らないであろう落とし子的エース兄。母は娼婦。なんとなくエース似。それ以上にロジャー似。ロジャーの血が強すぎる件。
それなりに荒れた地域でそれなりに擦れた生活をしながらすくすくと育ち海に出たら白ひげ入り前のエースと意気投合。
父親がどっかの海賊というのは聞いているがロジャーとは思っていないのでエースのカミングアウトを聞いてもふぅん。
そのままナチュラルにエースの兄貴ポジに収まりつつ白ひげ入りしたら白ひげさんからエースよりロジャーに似ていると御指摘を頂きました。
ロジャーを知っている組からは大体開口一番お前ロジャーの息子か?との御指摘を頂き本人もエースも首傾げ始める。
まさかなァ、んなはずは…いやァ?
「どう思いますかエースクン」
「俺に聞かれてもよぅナマエサン」
母親は死亡済みなので確認のとりようが御座いません。
でもお前が兄弟だったら、嬉しいかもな。
そんな曖昧な結論のまま、今日も白ひげ海賊団は平和です。
サカズキさんの場合
サカズキさんは不遇の幼少時代を送っていて欲しいので父親はクズ。海賊ではないけれど輩。愛人もいるよ。
母親とともに毎日父親の影に怯えて暮らし、いつか殺してやると過激な性格の基礎が出来上がるよ。このまま行けばサカズキさんも社会不適合者ルートだったある日、父親が愛人に暴力を奮っている現場に遭遇。日々のトラウマと刷り込みで動けなくなっているとその愛人の子が泣きわめく愛人を守り父親を撲った。サカズキよりちっこくて細っこい子供がサカズキにとって最大の恐怖を殴ったことに衝撃を受け、呻きながらもやり返そうとする父親を背後から撲殺。
子供同士は初顔合わせで、お互い腹違いの兄弟なんて実感もないまま逃げるように別れた。
その後何故かサカズキはお咎め無しのまま、父親のいない平和な日々に突入。
しかしすぐに、腹違いの兄弟が罪を被り海に出たと知る。しかしそこは子供。すぐに海賊に殺されたという話までサカズキの耳に届いた。
愕然としながら湧き上がったのは、蓄積していた鬱憤と虐げられた怒りと海賊への憎しみ。
その後海軍ルートを着々と進んだサカズキは、ある非番の日連れ出されたある酒場である男とすれ違う。
忘れもしない。腹違いの兄弟。
しかし男の背に刻まれたジョリーロジャーに気付き愕然とする。
名も知らない腹違いの兄弟。
人知れずサカズキの葛藤は幕をあけた。
白ひげさんの場合
両親をろくに知らずに育ったニューゲートの唯一の肉親は大きな背中だった。大きく、十字を描くような特徴的な傷がある背中。
顔すらうろ覚えなその背中の持ち主は、今思えば実際に血がつながっているのかすら怪しい。
にいちゃん。呼べばその手は時折ニューゲートの頭を撫でたが、同時によく殴った。ニューゲートは常にその背を追い掛けていたが、それ以上に置いていかれていた。
そうして今も朧げな記憶に残る頃、その背はニューゲートの前から姿を消した。ニューゲートを置いて海に出たと記憶しているが、子供の頃の記憶にそこまでの信憑性は無かった。
ニューゲートは当たり前のように追いかけ海に出た。まるで親を追いかける雛のようにその背を追った。
だがどれだけ追い掛けてもその背は遠く、ある程度の分別が分かるようになった頃、不意に思い当たったのだ。
自分はあの背にとって、重荷だったのではないかと。
それから、ぱたりとその背を追うことをやめた。酷く虚しかった。それでも虚しさを抱えたまま航海を進めるうちに虚しさは薄れ、記憶の大きな背に対する憧れのような感情が残った。その頃だろうか。何が欲しいと聞かれ、思いつくものが“家族”と明確な形を持ったのは。
あの背のようになりたかった。
大層な何かがあったわけでもなかったが、あの背がニューゲートは好きだった。あの背は誰よりも大きな背中だった。そしてその思いに、美化された幻想が混じっていることも分かっていた。
だから。
人ごみに紛れようとも決して紛れない、ニューゲートと同格の体躯の背を無意識に目で追った。気だるげに羽織られたシャツが男の足取りに合わせはためく。
ニューゲートは走ることを躊躇した。腰までもないような人々を蹴飛ばさぬように避けながら、おいと声を上げることを戸惑った。
そんなニューゲートのことは気づかぬまま、その背は記憶と同様にニューゲートを置いて進む。
「…っ!」
唐突に、ニューゲートははじかれた様に走った。その背に手を伸ばし、男の肩を掴んだ。
驚いた様に振り返った顔にぶわりと記憶が蘇る。にいちゃん。小さく呼べばその男は驚いた様に瞠目し、それから。
マルコの場合
幼少の頃、マルコが不死鳥の能力を手に入れた後から白ひげ海賊団加入までの経緯を知っている者は少ない。聞く者の大多数は顔を顰めるような子供時代だったらしく、マルコ自身があまり話したがらない。
ただ数少ない情報として、腹違いの弟がいるらしい。
らしいというのは、どこの誰がマルコの異母兄弟なのか誰も知らないのだ。生きているのかも分からぬ異母兄弟の事を聞くことはいかに無骨な海賊同士と言えどはばかられ、次第にマルコの過去に触れることは暗黙のタブーとなっていた。
いたの、だが。
いつもは兄弟船に乗っている、古株でまあまあクズと評判のある男が宴の時、不意に思い当たったように言った。
「おうクソ兄貴、女寝取られたことまだ根に持ってんの?」
モビーディックに、いろんな意味での戦慄が走った瞬間だった。
レイリーの場合
お互いに親がくずなのは重々承知していたが、くずから産まれたもの同士手に手を取り合うような殊勝な性格はしていなかった。物事の分別がつくようになると、各々当たり前のように海に出た。
何十年と顔を会わせぬまま過ぎた。お互いがお互いの人生を生きた。酸いも甘いも、互いが何を味わったのかも知らぬまま晩年を迎え、ふと、不意に、ばったりと再会したのだ。
「よう」
「やあ」
生きてたのか、なんて旧友と話すように打ち解けた二人は、二人して何かをもて余していた。
生き甲斐を失い行き場を失っていた二人は昔と変わらず殊勝な性格はしていなかったが、それでも何気なく手に手を取り合うように寄り添い始めた。
酒にギャンブルに女に、だらだらと過ごすだけだが、今さらなんとなく居心地がいい。ただの傷のなめあいだけれども。
シャンクスの場合
何をするにも二人一緒だった。違う腹から同じ年の同じ月の同じ日同じ時刻生まれてから、何もかもが一緒で当たり前だった。
海に出るのも見習いやるのもイタズラして怒られるのも泣くのも笑うのも全て一緒。
お前ら双子みたいだなァなんて船長に言われて、言われてみれば双子よりも似てるかもしれないなんてお互いに見やった。船長から貰った麦わら帽子とレイリーさんから貰ったバンダナが俺たちの見分け方。双子じゃないのにへんなの。