※管理人進撃はにわかです。歴代兵長出てるの??



地下のゴロツキ時代、遠くに一人の男の背を見ていた。リヴァイと同じく地下街出身の、ゴロツキ上がりの調査兵。数ヶ月に一度、ふらりと現れては女を買って去っていく。なああんた、金あるんだろ。下手打って一文無しなんだ、俺を買わないか。ただ遠目に見るだけだった男にそう声をかけた理由は分からない。ただ話してみたかった。話に乗ってきたら、適当に金を巻き上げるつもりだった。だけれど。

「ガキが娼婦の真似してんじゃねぇよ」

ぐしゃりと乱された髪に、呆れ混じりに吐き出された紫煙。その手がどうしても忘れられなかった。

そうして引き抜かれるように入った調査兵団。下心が無かったわけじゃない。あいつに会えるかもしれない。遠目に眺めるだけに戻ってしまった関係に、リヴァイは少しだけ男の姿を思い浮かべる。

「紹介しよう、君の分隊長になるナマエだ」

「…驚いた」

お前、あの時の。

そう言った男は変わらず、紫煙を吐いていた。






「ナマエ兵長」

そう呼ぶ事にも慣れた頃、数度の壁外調査をこなし、頭角を認められ始めた頃に向かった壁外調査。なんだ、と応えるナマエの声は素っ気ないが、互いに淡々とした会話は嫌いでは無かった。馬を走らせれば、見えてくる森。青い空とのコントラストが嫌に綺麗だったことは覚えている。

しかし唐突に、空気が変わった。

「立体機動に移れ!」

ナマエの声が響く。リヴァイが身を翻すと同時にナマエのブレードは巨人の項へと狙いを定めていた。

兵士長は伊達じゃない。その実力に誰もが舌を巻く。最小限の被害で、巨人を駆逐できたかと思った時だった。

「リヴァイ!!」

ナマエの悲鳴じみた怒声に、すべてがスローモーションに見えた。大きく開かれた口がリヴァイを捉え、ゆっくりとその歯が振り下ろされる。ああ、噛み切られる。そう理解はできたが体は動かなかった。ただその歯を見つめ、衝撃に身を固くした時。

舞った赤に反転する視界。

「兵長!!」

噛み切られたナマエの腕が巨人の唾液に塗れ吐き出される。腕を無くしたナマエが痛みに呻き、兵士の一人が巨人の項を削いだ。現状が理解できず、震える指先。

「ナマエ兵長…っ!!」

「おい、誰か止血を!!」

構うな、とナマエが荒い息に任せ怒鳴る。いいからいけ、止血ぐらいてめぇでやる。蒼白な顔で、しかし追撃するかのように現れ始めた巨人を見据えナマエは痛みを堪え立ち上がった。

「ぼさっとするな、てめぇも行け!!」

リヴァイの、震える指がアンカーを放つ。









その後、傷口を焼くというとんでもない止血をしたナマエがどうに生還するが片腕を失ったことで兵士長は降任となった。しかし頑なに壁外調査への参加を望むナマエは、片腕ながら一兵としての任務への参加を果たす。後任の兵士長がその腕を振るう中、リヴァイはただ呵責に苛まれた。

その呵責はリヴァイを兵士長へと押し上げた今なお、古参兵となったナマエを見る度にリヴァイを苛み、苦しめる。