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▼ 悩む鉄平

メイとは次郎繋がりで知り合った鉄平であったが、数少ない友人としてはいい関係が築けていると思っていた。二人で歩けば美男美女として中々の注目を浴びるし、メイとて鉄平のことは嫌いではないはずだ。そんな中で出来たメイの新しい友人になんとも複雑な心境だった。







メイはその明るい性格と裏腹に友人が少ない。一見キツそうな外見のせいかクセのある生態のせいかは知らないが、とにかく特定の誰かとずっと共にいるというのが無い。

鉄平ですら仲がいい部類の筈なのに不定期な連絡と会合のみというどこか寂しさすら感じる扱われ方だったのだが、最近メイとつるみ出した男がいると聞いて非常に複雑な心境だった。よりにもよってあの男とは、頭を抱えたくなるのも許して欲しい。

「メイちゃん大丈夫なの?あいつに何にもされてない?」

「なにが?」

本人はけろりとカクテルを飲みながら首を傾げるが、言っておくがあいつことゼブラは第一級危険性物で自身を含め再生屋がやっとこさハニープリズンに放り込んだ人物だ。馴染みの女性が関わりを持ったと聞いてへぇそうなんだと楽観できる男でもあるまい。

「なんかされたらすぐに言いなよ、また監獄送りにしてあげるからさ」

「はは、鉄平は昔から大袈裟なんだよぉ」

「メイちゃんは昔から無防備すぎるんだよ」

どこの世界に飲みに行っては毎度の様に潰れる女がいるというのだ。その度に拾って帰った頃が懐かしいが、与作に弟子入りしてからは世話を焼くことも出来ていない。

聞いた話では昔ほどではないにしろ未だに道端で潰れると言うのだからこの女は人を心労で殺すつもりではないだろうか。

「俺が一人前になったら俺んとこ来る?マジで」

一生面倒見るよ、なんて軽く言ってみるがメイは毎度さらりと受け流す。メイの面倒見れるの俺ぐらいだと思うんだけどなぁなんて独りごちるが、そう言えばゼブラはメイとつるめているんだったか。余裕ぶって好きに遊ばせていたのがアダとなってしまったらしい。

「俺は結構本気で言ってるんだけどなぁ」

「やだ、鉄平にはもっといい子がいるよぉ」

「メイちゃんってすっげーいい女なの自覚ないの?」

「ふふ、最高の女の間違いでしょ」

余裕綽々の笑みにきゅんとときめいた心臓は通常運転だ。

酒飲みで酒癖が悪くて自由で奔放。振り回される事が分かり切っている相手に惚れるとはなんとも難儀な恋をしたものだとわれながら思うが、この恋煩いも十代からなので今更と言えば今更である。

「はぁ〜、早く一人前になんないと相手にもされないな、こりゃ」

「与作さんはまだまだだって」

「げぇ」

会話の合間にジュースの様に流し込まれていく酒を横目で追いながら、今日も潰れそうだなぁと鉄平は呑気に考えた。送り狼にならないのは一概に鉄平の自制心と根性の無さからなのだが、男として見られてないかなぁと思うと僅かながら涙が零れそうになる。

ゼブラに先を越される前に男を見せなければいけないのだがどうしたものかと鉄平も目の前の酒を飲み干した。

今日辺り送り狼に、なんて考えても結局は実行に写せないのだからしょうがない。







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