other | ナノ


▼ 午前零時すぎ

この店は基本暇な店だが、たまには忙しい時もなきゃ潰れちまうのでやはりこういう日は必要だが俺は暇がいい。

コンビニの夜勤は店舗によって格差があるが、俺の店はどちらかと言えば好待遇だ。基本暇。好待遇だ。

久々に連続してアリガトウゴザイマシタを言ったような気がすると、漸く客の途切れたレジカウンターで棚に寄り掛かった。たまに忙しいとこれだからやだね。

まだ数人の客がいるが、あとは一気に来ても捌けないほどでもないと陳列棚の整理にレジカウンターを抜けると、気の抜けるチャイムが鳴る。イラッシャイマセー。入り口を見れば珍しい時間帯にレゲエさんが来た。他の客がいるときに座り込みは困るなあと、反射的に眉が寄る。

陳列棚を整理しつつレゲエさんの定位置を見やれば、案の定というか、微塵の迷いもなく座り込んだレゲエさんに立ち読みしていたキマジメそうなおっさんが微妙な顔をした。やれやれ。迷わず目の前の雑誌を取りそのまま座り読みを始めたレゲエさんが、商品整理が終わるまでに立てばいいなという希望虚しく、商品整理が終わってもそこから動かないレゲエさん。

さてさて注意しなければならないだろうかと、レゲエさんに近寄ろうとした時、俺よりも先に痺れを切らした人物がいた。

「君、座り込みはマナー違反ではないかね」

横で立ち読みしていたおっさんだ。

キマジメそうな見た目そのままらしいおっさんが、いかにも怖い見た目をしたレゲエさんに随分威圧的に声を掛けたものだから、横でアイスを見ていたギャルがそそくさとレジへ逃げてくる。え、このタイミングで会計ですか。

まぁ、レゲエさんは意外と注意を聞き入れてくれる人らしいので意外ともめ事にはならないかもしれないとギャルの会計を済ませた時、ギャルが出ていくよりも先にレゲエさんとキマジメさんが退店のベルを鳴らしてくれた。

帰路に向けていた足を止めたギャルの判断は恐らく正しい。

え、これ後日警察来たりしないよね?


prev / next

[ back to top ]