▼ なんかもう慣れた
「おいそこの問題児」
「あーん?」
仕事に疲れ漸く帰りついた我が家。開いていた鍵を不信に思いながらも上がったその先で、人の家を好き勝手漁った挙句ベッドを陣取りお気に入りのAVを垂れ流してくれていた男は、よお、となんでもないように片手を上げた。その後ろであんあん言ってる女優が何とも言えない。
「俺はお前に合鍵渡した覚えも秘蔵のエロビを貸出した覚えもないんだが」
「細かい事言ってんじゃねぇぜ」
「細かくねぇよ馬鹿」
「ああん?」
つまんねぇ野郎だな、と不満げな声を無視し占領されたベッドを取り返すべくその巨体を蹴りやった。が、その足が掴まれ、ずるりとそのままベッドに引きずり込まれ狭いベッドにむさ苦しくも重なり合った。腹に当たった硬いものに思わず眉がよる。
「なにおっ勃ててんだ」
「AVってのはおっ勃てるために見るんじゃねぇのかァメイ」
だめよいやよああん。ピンクちゃんは気に入っていた女優だが今だけは少しばかり鬱陶しい。けっ。
「前にも言ったが、テメェは食欲も性欲も底なしで付き合いきれねぇ。他所当たれ他所」
「当たる他所もないんでな、まぁ諦めろや」
てめぇも溜まってんだろ、としたり顔で下腹部をまさぐる無遠慮な手を叩き落としたいが、生憎溜まってるのは当たってるので続く勃起野郎というからかいに唸ることしかできない。あんあんらめぇ。ちょっと黙ろうかピンクちゃん。
「諦めろや、メイ」
「………はぁぁぁぁ…」
べろり。ムードもへったくれもなく唇に這った舌に思い切り顔をしかめて見せるがくつくつと笑ったゼブラに結局は何も言えず伸ばされた舌に舌を絡めその体に被さりなおした。
画面の中で疲れ果て、ぐったりとしたピンクちゃんみたいな女の子を抱きたいなんてコイツがいる限りできそうにない。体力的な意味で。
「…一発抜いたら風呂入るからな」
「ああ、飯も買ってきてる」
本番はそれからだろう、とあくどい笑みを浮かべたゼブラに、再度深い溜め息を吐いた。
prev / next