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▼ 英雄

俺には個性がない。

それが悔しくて、個性持ちが妬ましくて、しかし往生際の悪い俺はただただ羨望を捨てきれない。

生まれ持った運動神経も頭の出来も悪くないのに、個性なんてピン切りな能力一つで見下されるのが堪らなく嫌だった。

地の運動能力なら学校で一、二を争うし、勉強はまあまあ上位。人当たりの良さから人望だって悪くない。だけれど俺には個性がない。

「クソナードがヒーローなんざなれるわけねぇだろ!」

爆豪の声を皮切りに、嘲笑がクラスを支配する。

ウサギみたいに震える緑谷が、何かを言い返そうとして、結局叶わず唇を噛んだ。

緑谷も無個性だったな、なんてぼんやりと思いあたると、無意識に口が思ってもいなかったことを口走る。

「俺も、雄英」

ぴたりと、動きを止めたクラスの空気。

あの爆豪まで驚いたように固まって、俺を見た。

一同に注目してくる顔がなんだか面白くて、俺はへらりと笑う。

俺はこいつに負けたくない。ただそれだけだった。




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