泣きながら笑う顔が、綺麗だった。

あいつは湿っぽいことを嫌うからと、祝いだと掲げた杯が震えていた。

堪えきれない嗚咽すらも笑い声で誤魔化して、そんなあんたの姿にこっちが泣きたくなった。笑うな、泣けよ。そんな陳腐な台詞も吐けずに頬に伝う涙を拭う。なあ、俺、笑えねえよ。こんな辛い酒飲めねえよ。

俺はそいつの為に泣けるほど情も義理もないけれど、あんたのせいで泣いてしまいそうじゃないか。

「レイリー」

あんたの声があまりに震えているから、つられて俺の声まで震えてしまいそうになる。笑うな、泣けよ。そう言えないのは、あんたとそいつを、馬鹿みたいに眺めていたからだろうか。あんたは、そいつの隣で、ずっと笑っているのだと思っていたのに。

お前も飲めと差し出された杯を、一滴の涙が揺らした。

だから、こんなところで新時代を祝ってないで処刑台へ向かえばよかったんだ。黙って見ていられる訳がないと言うなら、そのまま処刑なんてぶち壊して、偶にはあの馬鹿になんてことしやがるって怒られて、それで。今頃また、笑ってればよかったんだ。どうせ残り僅かな時間を、無理やりにでも引き延ばせばよかったんだ。

「なぁ、レイリー」

聞き分けのいい大人ぶって、俺なんかに縋って、泣きてぇくせに無理やり笑って。海賊のくせに。

途切れることなく頬を濡らす雫をそっと拭えば、レイリーの口元が強張る。ばかやろう。小さく吐き捨てた悪態は、嗚咽と共に耳にこびりついた。ああ、ばかだよな、ほんと。

そのばかやろうが今は少しだけ、ほんの少し、羨ましいなんて俺も。