少しばかり拗ねた様子で指の先を眺める我らがキャプテンにココアを差し入れた。意外と飲むんだよ。

「……グレイ」

「はいはい、後でしてやるから」

「洗濯とか他の奴に回せ。先にしろ」

「そういうわけにもいかないでしょ」

「船長命令だ」

「あーもー」

ほら、と黒いポリッシュを寄越されて渋々向かいに腰掛ける。

初めは姉貴のマニキュアをやらされていた悲しい弟の運命だった。それが乗り込んだ船の船長の爪にネイルするハメになるとは誰が想像出来ただろうか。いやだって、左手無くして来るんだもんこの人。

剥げた黒色を一度落として、