方向音痴?しょーがないよ、だって君と僕とはビブルカードのごとく惹かれあっているからねえ!僕も君も君と僕がいる方につい進んでしまうのさ!つまり君と僕とが共にいればはい万事解決!無問題!

笑顔で言い切った男は多分頭がおかしい。

あらあらうふふと笑うロビンと、ホモは死ねと言わんばかりのサンジと、興味薄いその他。だがその実しかし、確かにこの男が船に乗り込んでからというものゾロの単独失踪率は格段に減った。代わりに頭のおかしい仲間との共同失踪率が格段に上がってしまったが。

方向音痴同士というのは進む方向が似ているのか、迷った先で必ずというほど二人はかち合う。二人でいれば心強い、なんて殊勝な性格でもない二人だが、かち合ってしまえば共に行動する程度には殊勝な所があるのでそのまま共にあちこち迷うのだ。

それを何度も繰り返すうちに、いつからかこの頭のおかしい仲間はそれを運命だと笑うようになった。

ポジティブといえば聞こえはいいが、要は都合のいい頭をしているだけのこの男。何も考えずに発言していることが多々あることを知っているだけに、これだってどこまで本気か分かったものじゃない。

へらへら何も考えちゃいない頭で、この男は結構な頻度の運命を口にする。

え、なあに、ナミさん。この間のお宝?うん、僕が持っていても使ってしまうからねえ、君に管理をお願いするよ。いつも悪いね、ああでも、浪費家の僕には君みたいなお嫁さんが理想だよねえ、おやサンジくんなんだいその足はいたいいたい蹴らないでよ!

ほら、これだって財布のひもを握られただけなのに都合のいい頭はえらく前向きな捉え方をする。次はきっとサンジのフェミニズムがカッコイイだのどうのと言い出して、その次には新たな運命とやらを見つけてくるだろう。いっそ忌々しいほど随分と気の多い運命である。

そこまでだらだらと考えて、はたとゾロは思考を止めた。

「なあにゾロくん、そんなに見つめられると照れちゃうなあ」

あらあらうふふと笑うロビンと、ホモは死ねと言わんばかりのサンジと、共同の薄いその他。でも惹かれあっているから仕方ないねえとニコニコ笑った頭のおかしい仲間に、ゾロは思わず顔を顰めてしまった。