よくさあ、あるじゃない。悪役が人質をとって、こいつの命が惜しかったら動くな!ってやつ。あれ、俺思うんだけどさあ。

「悪人相手だと意味無いよねぇ」

その現場をのほほんと茶を啜りながら眺めて言う俺は悪人というより野次馬である。物騒な世の中、仲間だって切り捨てる奴がいるのだからぶっちゃけあれは人の目がある公務員向けの作戦だと俺は思う。有名な赤いわんちゃんは除外。

現状を説明しよう。俺のいるテラス沿いの大通りで海賊が海賊を人質にあーだこーだやっているのだが、ここら辺の治安は最悪なのでよくあることなので住民も店員も全く動じないのである。みんなっょぃ。俺は内心超ビビってます。だって...一人だけ逃げるのって...めっちゃかっこ悪いやん...

「てめぇ今なんっつった!」

人質をとってる方の海賊が俺の座ってるテラスに向けて怒鳴った。え、誰かなにか言ったの?きょろりと周りの人を見渡しても皆知らん顔なので、倣って俺も知らん顔、しようとしたら机にナイフが飛んできて思わず叫びそうになった。誰狙ってんだノーコン!

投げたやつ見たらおっかない顔してたのでそっと視線を反らしました。

ていうかナチュラルに去ろうそうしよう。店員さーん、おかいけーい!寄ってきた店員さんにお金を渡すと、店員さんが飛んできたナイフをバインダーで受け止めながら領収書をくれた。っょぃ。

「じゃ、ごちそうさま」

「またお待ちしてます!」

いつ来ても、あんなにっょぃとは思えない爽やかな店員さんに見送られ俺はそそくさと逃げた。うん、大丈夫逃げたっぽくない!

ちらりと最後に盗み見た海賊は、人質をとられてたほうの海賊に倒されていた。めでたしめでたし。

って、せっかく逃げたのに!