「なんでテメェにそんないい女が嫁に来てんだよ解せねぇ死ね殺すぞ!!!」

「意味の分からねぇ喧嘩ふっかけてんじゃねぇやいこのタワケ!!!」

ドレスローザのごたごたに巻き込まれて泣く泣く棟梁に付き合ってたら何故か棟梁にいい女が嫁に来た。美人で甲斐甲斐しいとかなにそれ。お前の許嫁はあの気立てのいいお嬢様(笑)だろ!?と涙ながらに跪けば横殴りの一線がそうはさせてくれない。うちの棟梁は気が短い。違った、気が高ぶりやすい。

「俺は嫁の宛もねぇのにテメェだけ入れ食いとかマジ許すまじ!!決めた!!殺す!!」

「ふざけんじゃねぇそいつは俺のせいじゃねぇだろうが!!」

「うるせぇテメェを殺して俺が棟梁に…ならぇねぇからやっぱいいや」

「急に盛り下がってんじゃねぇやい毎度ながら!!!!」

だからふられんだろうが分かれよいい加減!!と青筋浮かべた棟梁に思い切り蹴飛ばされ、あーれーと漫画のように吹っ飛び地面に叩きつけられたがまぁいつもの事である。

けろりと起き上がった俺を呆気に取られて俺を見ていたいい女、もとい棟梁の嫁に傅いて、恭しくその手を取ればぽっと頬を染めた棟梁の嫁は可憐に恥じらってみせた。

「お嬢さん、こんな暴力野郎はやめて俺にしないか。俺はあんたが欲しい」

「私…必要とされてる…!?」

「やめねぇかグレイこの野郎!!」

「ぎゃっ!!」

いっちょまえに亭主ぶって嫁を俺から引き離した棟梁にげんこつを貰い呻いていると、ああ、でも私には夫が…!!なんて苦悩する新妻の姿。あ、これ俺が手を出したらいあかんやつや…俺には地雷や…

棟梁もそれが分かっているのか、しっしと手で追いやられ俺は素直に棟梁の恩人に加勢にでも行こうと心に決めた。許嫁ならともかく、まともな結婚で棟梁に先を越されるとは、もういっそ討死しよう。

「あ、あの!!」

そうして幽鬼の如く立ち上がった俺に棟梁の新妻が慌てて駆け寄り、そっと俺の手を取った。

「夫がいるからあなたのものにはなれないけど、私に出来ることがあるなら何でも言って!!」

はい、ずっきゅーん。

いい女にそんな事言われて靡かない男がいるか?いやいない。反語。お嬢さん…なんて昼ドラばりに空気をピンクに染めながらその手を握り返し、歯の浮く台詞の一つでも言おうかと口を開いた時、ばちこーんと背後から横っ面を張り手された。

「人のもん欲しがるのは悪い癖やい」

「いーやマジで惚れたね」

「お前そう言ってブーの彼女寝取ったよな」

「その話はやめろ殺すぞ」

その件に関して俺は被害者だ。

兄弟揃って地雷趣味しやがってと歯噛みしだした俺に隠すことなく鬱陶しそうな顔した棟梁の顔と言ったら。

「俺も嫁欲しい...」

「その盛り下がる性格直さな無理やい」

「棟梁に言われるとムカつく...」

もう俺帰っていいかなぁ。ぶちぶちいいつつ祝福がてら中指を立てた。結婚式に呼んだらぶちころがすからな。