別に、悪気というか、悪意というか、下心すらないのは分かっている。

三つ子の魂百までとはよく言ったもので、手遊び癖の抜けぬまま大人になった男は常に何かを弄んでいた。

道端に落ちていた石であったり、誰かが零した空薬莢であったり、タオルの縫い端だったり金貨だったり手の収まりが良ければ何でもいいらしい。おかげで男の周り物は妙に削れて変形していたり欠けているものが多い。

そこでだ。宴というほどでもないが気持ちよくなる程度酒を飲み、食堂の片隅で酔い潰れた男を隣室のサッチが戻るついでに運んだまでは良かった。

ベッドに放り込めば僅かに浮上した意識で手慰みを探しだした男に、酒に緩んだ好奇心がほれと己の指を差し出してみた。条件反射で握り込む乳飲み子の様にその指を掴んだ男は、しかしお気に召さなかったようで。

そのまま普段の強引さを眠気でもって発揮し、悲鳴を上げるまもなくサッチをベッドに引きずり込んだ。背後から抱きすくめられ身動きを封じられたサッチは次いで脇腹をまさぐった手にぎょっと目を見開く。

下卑たイヤらしさは感じない、手慰みを探す手付きは性感云々以前の不躾さで酒に温もった体を這い回り、そして見つけてしまった。

「…っ!」

びくりと、跳ねそうになる体を押し止め悲鳴を飲み込む。