グレイが笑うと、ちょっと焦る。

眉が困った様に下がって、細くなった目尻も下がって、口角が少しだけ上がる。泣きそうに笑うんだ、グレイって。

だから、ちょっと、焦る。

グレイは俺よりずっと年上で、でも比較的新入りだってマルコが言ってた。だけど海賊歴は長いらしく、懸賞金は高いし腕っ節だってある。

無愛想で、目つきが悪くて口数が少なくて、滅多に笑わない。そんでもって、俺の事が多分嫌い。

俺だけ、どことなく態度が違う。

オヤジの息子になる前はよくオヤジの近くにいたグレイに何回も突っかかって、謝るにしてもタイミングが掴めなくて、それが原因かななんて思ってるけど多分違う。グレイはきっと、そんなこと忘れてる。

何でかなんて知らないけど、そうだと気付く程にはグレイを目で追ってる俺がいた。同じ二番隊になって、最初はただ謝るタイミングを探してただけだった。今までごめん、出来れば、これからよろしく。そんな言葉が言えなくて、ずるずると目で追っているうちに何となく嫌われてることに気が付いた。

そうか?なんてサッチやティーチは言うけど、多分そうだ。だって、俺だけだ、グレイが目を合わせようとしないの。

嫌われてる。避けられてる。その事実がなんだか俺を凹ませる。

それでも同じ隊だと顔を合わせる回数も多くて、話しかけないといけない用事がたまにはあったりして、そして、それで、どことなく避けられる態度にやっぱり凹む。

真夜中の甲板。

昼寝し過ぎたせいか寝付けなくて、部屋を抜け出した。吹き抜ける潮風は気持ち良くて、満開の星空は綺麗で、黒い海は見慣れたけどやっぱどこか怖い。

見張りの奴が声をかけてきて、それに声を返してぼんやり海を眺める。

兄弟なれたなら、なれるなら、仲良くしたい。