怒号と喧騒と銃声と、取っ組み合いの乱闘と斬り合いが入り乱れる海戦の最中だった。

弾き飛ばした剣を追うこともせず、迷いなく腹にタックルをくれた男に背が欄干へ押し付けられる。軋む様に背を受け止めた欄干と男の肩に内臓が悲鳴を上げ、食いしばった歯がぎちりと削れた。

「てめぇ…っ!!」

「一緒に落ちるか、色男」

男の足が欄干にかかり、覗いた顔がにやりと笑みを象った。

ふわりと肝が冷えるような浮遊感に、思わず目の前の男の方を握り締める。やばい。思った時には視界を空が埋め尽くした。

「ぐぅ…っ!!」

能力者は海に嫌われる。いくら格好付けた言い回しをしても要はカナヅチになるというだけだ。

ただそれが、海に生きるものにとっては致命的というだけで。