今まできらきらと輝いて見えていたものが、急に酷くつまらないものに見てしまうときがある。
それは煌びやかな装飾品であったり、喉を潤す美酒であったり、優美な絵画であったり、愛想を振り撒く踊り子であったり、思惑渦巻くギャンブルであったり、きらきらと世界を輝かせている一つ一つが不意に色褪せてしまう。 そのくせ俺は強欲で、きらきら輝くものが次々と欲しくなるのだ。
困ったものだと友人は笑っていた。この間までほしがっていたあれやこれを届けてくれる友人は、それがもう俺の目に輝いて見えない事を知ると少しだけしょんぼりして今欲しいものは何だと聞いてからまた海へとでていく。
友人は、自惚れでなく俺に惚れている。
きらきらと輝く海へ、きらきらと輝く大きな船で、きらきらと輝く仲間を引き連れ、きらきらと輝く笑みを浮かべ旅にでる。次にいつ訪れるのかは知らない。一週間後であったり一ヶ月後であったり半年後であったり。毎回俺が欲しがっていたものを携えて ひょっこりとやってくる。
俺のために持ってきたものを蔑ろにするほど冷血ではない俺がありがとうと笑うと、どうして分かってしまうのか少ししょんぼりして笑うのだ。
処世術を身に付けていない訳ではないのだけれど、不思議と嘘を見破られてしまう。
けれど、そんな彼は常にきらきらと輝いていて眩しい。
「グレイ!」
嬉しそうに俺の名を呼ぶ友人は、俺のために持ってきた酒瓶を得意気に掲げながら笑顔で言う。
ほら、おまえが欲しがっていたものだ。
いつもならそれに笑い、ありがとうと返す。嘘ではなくその気持ちは確かに嬉しい。
けれど今日は、夕日にきらきらと輝く酒瓶に少し驚いて、ああ、確かに欲しいものだと笑みをこぼした。ありがとう。いつもと同じセリフ。
なのに友人は驚いた顔をして、いつものしょんぼりした顔ではなく本当にうれしそうな顔をしたものだから、こちらまで驚いてしまった。
「グレイ!グレイグレイグレイ!」
何度も俺の名を呼びながら抱きついてくる友人にどうしたんだと声をかけ抱きしめ返せば、夕日に照らされ赤く染まったうれしそうな顔が少女のように綻んだ。
ぎゅうぎゅうと抱きついてくる力の強い友人の腕は片方だけだというのに少し苦しいけれど、その赤い髪を撫でれば照れくさそうに胸元へ顔を埋める姿に離れる気にはならない。
「一緒に呑もうか」
「ああ、そうしよう!」
眩しいほどにきらきらと輝く友人は、夕日に照らされさらに輝きを増した。今までのどんなものより、輝いているかもしれない。
「シャンクス」
離れる身体に名残惜しくなって頬にふれた。
「俺、もう一つ欲しいのがあるんだ」
見開かれた双眸に映る俺は、珍しく真剣な顔をしていて。
「ちょうだい?」
返事も聞かず、震える唇をぱくりと食べた。
ほら、俺は強欲だから。
今度はお前が欲しくなった。