悪意にどろりと濁った目を、この子供はいつからする様になったのか。
子供と二人で旅をするようになりそれなりの時が経った。その間に子供は少年とも青年ともつかない年に差し掛かり、いつの頃からか、子供は子供の無邪気さを忘れどろりとした目で敵を見るようになった。
「おれからニューゲートを取ろうとするからだ」
元から目を見張るような素質を持ち合わせた子供だった。そこに明確な悪意をねじ込んで、素質は存分に開花し始めていた。
ぐしゃりと原型を無くした敵に一瞥もくれず、振り返った姿は無邪気な子供のままなのにどこか背筋をひやりと冷やした。
ひんやりとニューゲートを包むそれは畏怖か、不吉の予感か判断のつかぬままニューゲートは子供の笑顔に笑い返した。しかしその顔も、ニューゲートが抱えるぐったりと意識のない人の影を見つけるとぴたりと固まる。
「...何それ」
そっと細める瞳はどろりとした色こそ浮かべていないが、まるで獲物を見定めるようにニューゲートの抱える子供を舐めた。
「下で繋がれてた。ちと手当してやってくれねぇか」
「ふぅん...食料積み込んでからならいいよ」
「あァ、頼む」
手馴れた略奪のために踵を返した子供は、ちらりと振り返り、何を言うわけでもなくそのまま敵船内に消えた。
人一倍食い意地が張って、人一倍所有意識が強い。そんな子供だが、まだ懐に受け入れる余裕はあるらしい。昔の仲間達に固執はしているが、それでは駄目なのだ。
世界の広さを知らねば、この子供はいよいよ化け物に身を落としてしまう。
その固執を向けられていることが嬉しいなんて、それでは駄目なのだ。