とめどなく溢れる涙を拭ってやりながら、ニューゲートは小さな背をあやした。

下船命令の後、船長は船とともに海へと沈んだ。抗争に負けた海賊の末路としては、上等だ。

しかしそう簡単に割り切れるものでないのが感情で、腸が煮えるような怒りと悲しみを押し殺しながらニューゲートはただ涙を流す子供をあやす。これが海賊だ。死と隣合わせなのだ。そう言って聞かせても、子供の涙はとまらない。

「やだ」

ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、涙声で子供が駄々をこねる。

「やだ、いなくなるの、やだ」

「...ナマエ」

「どうしたら、いなくならない?おれ、おりたくない、みんながいい」

みんながいいと、泣き腫らした目で子供はニューゲートを見上げる。そんなわけにはいかない。船長がいなくなった今、この海賊団は散る。なら、ナマエはどうするのか。どこか平和な島で。そんな意見も出たが、海賊としての生き方しか知らぬ子供へそれほど無責任なことなど誰ができるか。

「おれと来い、ナマエ」

まん丸に見開かれた目が、ニューゲートを見上げて涙を零す。

「おれと来い、お前はおれたちの…おれの息子だろ」

ゆっくりと、しかししっかりと頷いた小さな頭。その頭を撫でて、ニューゲートは小さく笑った。

「ひとりは、やだよ」

震える声に、どうしようもなく薄暗い感情が蠢くことには気づかぬふりをして。