ぱちりと目を開けると、何人かの男達が締りのない顔で幼子をのぞき込んでいた。最近ではすっかりと馴れてしまった光景の一つに、にぱりと幼子は寝ぼけ眼で笑みを浮かべる。

「はぁん...!」

まるで生娘の様に幼子の笑みに一同が骨抜きになる様を、一歩引いた所ではニューゲートは苦笑混じりに眺めていた。

ニューゲートが拾ってきたこの幼子を見た時、船長を含む一同が一同顔を顰めたのは記憶に新しい。当然だ。海賊が海賊船で、飯も満足に食えない子供をどう育てろと言うのか。

それでもニューゲートは説得した。説得して説得して、無理ならば孤児院が見つかるまで、せめて治安のいい島までと説き伏せて、乗せてしまえばこの有様だ。

「ナマエ〜パパでちゅよ〜」

「ふざけんな父親は船長だって相場が決まってんだ!」

「船長!泣く泣く!」

一番の難色を示していた船長がこれなのだから、なんと気のいい海賊団か。

癒しの少ないこの船上で、まるで天使でも扱うように幼子をあやす海賊団に幼子はそれこそ天使のように笑う。本当に手のかからない子だ。眠い。おむつ。暑い、寒い。不慣れな男手に扱われ不便が多いだろうに、子供はあまりに泣くことをしない。我慢の限界で申し訳程度。いや、空腹に関してだけは鬼のように主張するが、それだけだ。

幼いながらに目の前で親を殺された光景に何かを感じたのかもしれない。物心すらついていないというのに遠慮するような仕草は愛らしいと同時に痛ましい。

「ふぇ...っ」

「ニューゲート!ミルクだミルク!」

まぁ、泣く間も無く誰かがあやしているせいもあるかも知れないが、ニューゲートはやれやれとミルクを作りに食堂へ向かった。