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「キャプテン、いい加減、臭いです」

倉庫が。

朝食を終え、それぞれが思い思いの時間を過ごす中、うんざりした顔で苦言を呈した一人のクルーに、何がだ、と返そうとした代わりに、あ、と間抜けな声が零れた。忘れていた。すっかりと。倉庫に突っ込んだままのあの男達。

「死んだか」

「いえ、意外とぴんぴんしてます」

「そうか」

ならば誰か餌を与えていたのだろう。心優しいクルーがいたものだ。しかしその他の面倒は見ていない。なんとも海賊らしい無責任さだ。ならば、と丁度欠伸を零しながら遅い朝食に顔を出したエルを見つけ声を掛けた。主な被害者は、エルと自身だ。

「どう処分してほしい」

眠そうな目を数度瞬かせたエルが、なんとも歯切れ悪く頭を掻き、それなんだけどと珍しく少しばかり媚びるような視線を寄越した。

「え、先輩、頭でも打ちました?」

「お前って本当何気に失礼だよな」

だってそうでしょう、と瞠目したクルーに同意するように頷けば、キャプテンまで、と心底嫌そうに顰められた顔。

「ちょっと思うとこあって、生かしときたいんだよ」

「恩に着るタイプじゃ無さそうだがな」

「…まァ、そうなんだけど」

ダメか、と甘える様に小首を傾げたエルにクルーが気持ち悪いものを見た様にぎょっとする。正しい反応だろう。

「…好きにしろ」

それに不整脈を打った自身の心臓が相変わらずイカレているだけで。

意見が通ると思っていなかったのか、驚いた様に目を見開いたエルが、マジか、と間の抜けた声を上げ、次いで何時も通りのガラの悪い笑みを浮かべた。流石キャプテン。調子のいい野郎だ。

朝食を取りにエルが離れると、近くに座っていたペンギンが訝しげにこちらを見やる。

「いいんですか、キャプテン」

ちらりとペンギンを見やり、別にと口角を上げて見せればペンギンは唸るように首を竦ませる。

「生かしておいたところで、どうこう出来やしねぇだろう」

「そりゃあ、まあ、そうですけど」

けどエル、最近変じゃないですか。その言葉にすべての疑心を込めたペンギンが、ちらりとコックと笑い合うエルを見た。変、と言われれば確かにと頷かざるを得ない。事情を知らなければ尚更か。

「気になるなら問い詰めてみたらどうだ」

「うーん…キャプテンがいいならいいんですけど」

あんまりエルを甘やかさないでくださいよ。ペンギンが見透かしたように言うものだから、思わず言葉に詰まりペンギンを見る。

いいや、そう言えば、前から良く言われる台詞だ。

シャチと共に腰を下ろしたエルを見つけ、あの二人はすぐ調子に乗るんですから、といつも通りペンギンの小言が続いた。

「キャプテン、今日は天気がいいよ!後で甲板行こうよ!」

空気を読まないベポの発言に救われる機会は、案外多いのかもしれないと思いながら腰を上げる。こいつの小言は始まると長いのだ。





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