すっかり日が暮れた窓の外を一瞥し、無防備に寝顔を晒す馬鹿を見た。

小さなダイニングテーブルに突っ伏し、すやすやと、警戒心の欠片もなく眠っている顔にそっと目を細める。

「………」

ひどく、心地よかった。

いつの間にか、あれほど痛かった頭痛が消えていたことに気がつき顔の傷をなぞる。塞がりきらぬ傷は痛むが、それだけだった。

煩わしいものがないのだ。目の前の男は、クロコダイルにとって面倒なものを何一つ持っていない。

そっと、目を細めた。

ふわふわとした金の毛並み。寝顔はますますあどけなく、ぽかんと開いた口が全く知性を感じさせない。馬鹿の顔だ。考えるのが馬鹿馬鹿しくなるほどの、子供地味た寝顔。

蝋燭に灯った薄明かりが、ゆらりと揺れて影が歪む。

ふと、触れてみたくなった。昨夜の温もりを思い出したわけではないが、柔らかそうな頬にそっと手の甲を寄せる。

あと少し、もう少し。

手の甲が掠めたとどちらが早いか、ぱちりと開いた目に咄嗟に身を引いた。

「ん…やべ、寝てた」

乱雑に口元を拭い、数度瞬くとはっとしたようにクロコダイルへ向けられる視線。