俺は海賊だ。海軍でも賞金稼ぎでも無い、札付きの海賊だ。だというのに。
「ナマエさん!」
きらきらとした目が良心を豪快に抉る。
う、と胸元を抑えて蹲った俺に首をかしげた子供は純粋でいたいけでちょっとバカだ。
ちょっと昔のいざこざで借りがあったせいで、なんだかんだと難癖をつけてこき使ってくる国王がいるのだが、そのせいかこの子供は俺を国王付の親衛隊か何かと勘違いしている節がある。
違う、なんて野暮なことも言えぬままはや数年。子供の夢は俺のような立派な親衛隊になることだとかなんとか。
聞いたか、俺のような、だそうだ。ゲロ吐くわ。
うう、と確実に俺の精神は削られていく中、きらきらと木剣を持って鍛錬を強請る子供に胸元を抑えながら頷いた。
また城から抜け出してきていたコブラ王子が面白そうににやにやと眺めているのを横目に、国王付の親衛隊がこんなとこいる分けないだろとか、親衛隊が一般の子供に稽古をつけるかとか、身なりとか給料とか俺が親衛隊だった場合の矛盾点を脳内で上げ連ねるが結局口に出せるはずもなく。コブラ王子は城に帰りなさい。
「ぜったい親衛隊に入ります!」
きらきらとした目が何より怖いって、俺、海賊に向いてないんだろうなあと一人静かに血を吐いた。