俺も含めた話だが、ゾオン系の能力の弊害として、その動物の生態に引っ張られる事がある。

それは嗅覚だとかの身体的特徴だったり、食事の好みだったり、夜行性だとか習性だとか多岐にわたるわけだ。わけだが、これはどうなのだろうか。

「………」

ふむ、とワザとらしく顎をさすった俺ははたから見れば至極まじめに何かを思案しているのだろう。まぁ、あながち間違ってはない。

訓練で余程しごかれたのか、うとうとと舟を漕ぐ新入り。ルッチとか言ったが、すぐ死ぬか極端に生き残るかわりとはっきり分かれそうな雰囲気が満ち満ちている生意気な新入りである。そいつがそう、俺の目の前で、うたた寝をしている。

舌をしまい忘れて。

気難しそうなきつい眉と閉じられた目の整った顔立ち。その下半分で、薄い唇からぴょっこりと顔を出している薄い舌。

ふむ。おれは再度頷いて映像電伝虫を手に取った。

案外この新入りのことが好きになれそうだと思った瞬間である。