俺の横を走り抜けようとしたガキが俺のズボンにアイスをぶちまけたので蹴り上げた。軽々と吹っ飛んでいった体にぎょっとしたのは笑ってみていた父親だ。

ぎゃあぎゃあと喧しかった男を物理的に黙らせれば、今度はオーナーとアイスを買いに行っていたチビがぎょっとした。

「なにしてんだ」

「クリーニング代の請求」

「ボロぬのにクリーニングもくそもねぇだろ」

「俺もそう思う」

あほらしいと言わんばかりの目で俺を見たチビにようやく父親を開放して、チビの両手を塞いでいたアイスの一つを受け取る。

俺はチョコとストロベリーのダブル。チビはバニラとキャラメルのダブル。オーナーは抹茶のシングル。ん、と突き出された釣り銭にいらねぇよと首を振った。なんで偶然出くわしたオーナーにまで俺が奢っているのか謎だ。

街角のベンチを占領しつつ三人して舐めるというより齧り付くようにアイスを頬張り、三人してだらだらと時間を無駄にする。

「てめぇ遊ぶダチぐらいいねぇのかよ」

「クソガキのあいてはおことわりだ」

「その言葉でてめぇの将来が垣間見えた」

やれやれとワッフルコーンを齧り、最後の一口を口内に放り込む。その横で半分も進んでないチビを横目で見ながら、さて暇潰しは無いかと頭を巡らせる。夜はいくらでもする事があるってのに、昼間というのはどうも暇だ。口喧しいオーナーの相手をしようかという気分になる程度には。

「クロコダイル、お前、もうちょっとマトモな保護者探した方がいいんじゃないか」

「テメェにだけは言われたかねぇよ」

ボコられてる一般市民を見ても知らん顔を決め込む神経を持った元海軍がマトモだというなら俺だって充分マトモだ。

馬鹿みたいな貶しあいを馬鹿にしきった目で眺めるチビに、コイツみたいにはなるなよと忠告すれば