海賊船が港に入ったと噂を聞いて、欠伸を零した。

「億超えだってよ、やるか?」

「今回はいいわ、気分じゃねぇ」

「んだよ、昨日負けて一文無しだろ。俺もだ」

「ちなみにツケがやばい」

「おう、俺もだ」

ダメ人間の集まりだな、と飯をたかりに押し掛けた賭博仲間の一人と欠伸を零した。ま、今回はいいか。やばくても動かないのがダメ人間の極みらしいが、海賊上がりなんて大体がこんなもんだ。

「チビは?」

「飯食いに行った。あいつ金持ちだから」

「奢ってもらえば」

「馬鹿言え」

なんて俺の家よりは上等な賭博仲間の家のソファーを陣取りぐだぐだやってるうちに、なんとなく表道路が騒がしい事に気が付いて視線を向けた。なんだ、喧嘩か?未だに欠伸を零す仲間と眠気の残る目を見合わせて、重い腰を上げて窓を開けた。

「…あれクロコダイルじゃね」

「奇遇だな、俺もそう思った」

手配書で何度かお目にかかったことがある男が子供相手にぎゃあぎゃあと騒いでいるのを見つけ、二人して顔を見合わせた。なにやってんだあのチビ。

「あ、おい」

がつ、と聞こえなくても分かりやすく想像できるほど軽々吹っ飛んだ体。もちろんクロコダイルだ。