もう何年前になるか分からないが、チビが独立してどうも手持無沙汰をもて余した俺は早々に海へ出た。

そもそも、あんなジジイが小うるさい町なんか長居する予定など無かったのだ。チビとジジイの罵声が恋しいとかねぇから、マジで。

なんだかんだと、賞金稼ぎの真似事をしながらたどり着いた砂漠の国。腹ごしらえと衣装の調達もそこそこに、最近出来たのだという目当てのカジノに足を踏み入れた。

きらびやかな喧騒に、裕福が服を来て歩いているような客。スロット、カードにダイスと、ゲームの種類も悪くない。

手始めになにを、なんて品定めしていると、高級カジノっぽい雰囲気なくせにジジイの賭場でやってたような俗っぽいカードゲームなんかやっているのを見つけ足が止まる。

にこりと愛想を振りまいたディーラーの小僧には悪いが、最初は軍資金を稼ぐために勝たねばならぬのだ。なんでもこの国には英雄様がいるらしく賞金を稼ごうにも以下略。

とりあえず、と有り金分のチップをテーブルに置いた。

知ってるか?ブラックジャックってのはなんかこう、計算したら勝てるんだってよ。





「お客様、オーナーがよろしければVIPルームへご招待したいと申しております」

にこりとは笑った女はお世辞抜きで美人だった。

まだ幼いが、三十路手前にでもなれば艶のあるいい女になるだろう。顔を隠すように眼深に被った帽子から覗く目はどこか探るように俺を見ていた。

「オーナーって怖い?」

「それは、お答え致しかねますわ」

「美人秘書を連れてる奴ってろくな奴いないんだよなァ…」

「…おだてるのが上手なのね」

ふふ、と小さく