※GOLD注意
新しくなんちゃらってカジノが出来たってんでひょっこりと海を渡ってみたのだが、なるほど大層なカジノができていた。ぎらぎらし過ぎて趣味じゃあない上、目に痛いオーナーがどことなくチビを思い出させて鳥肌が立ったが、まぁ娯楽としては悪く無い。しかしチビがあんなきらきらして歌い出したら俺はどうすればいいだろうか。頭をかち割ればいいのか。そうか。
「久しく見ねぇと思ったら何してんだてめぇ…」
「どこ見てもぎらぎらしやがって目がいてぇ」
「はぁ…幾ら負けこんでんだ」
「一億ぐらいだなァ」
「はぁ………」
「んだよ、小言言うために掛けてきたのかよ」
はぁ、と再度盛大に溜息を吐かれて思わず顔をしかめた。負けたもんは負けたんだから仕方がねぇだろうが。雑魚のくせにと、チビがチビの時から聞き飽きるほど言われてきたセリフにこちらがため息を付きたい気分だった。
憎たらしさはそのままに、年を食った分悪人相となった顔を真似した電伝虫はこの上なく呆れている顔だ。
「話はこっちでつける。てめぇはそこから、一歩も、動くな」
いいな、と通話が途切れた。
辟易した気分で電伝虫を見下ろして、むっつりと唇を引き結ぶ。何が楽しいのかこいつは、年を追うごとにどこぞのおかんのようになりやがる。面倒見がいいような質ではないくせに、まるで俺が目の話せないガキであるような言い草を思い出して舌をつきだした。いやこいつは案外面倒見がいい。人がいいというか、人との線引が下手なタイプだ。じじいには親の欲目とーーーいやそれはいい。問題は俺がガキ扱いというとこだ。
「ふふ、ナマエ様、一発逆転の丁半博打でもいかがです?」
一人悶々と考え込んでいると、お貸ししますわよ、なんて話しかけてきたコンシェルジュの女が妖艶に微笑んだ。惚れ惚れする美人ににやりと思わず笑って、しかし同時にコンシェルジュの女の電伝虫が鳴る。
遊びの時間が終了した知らせに、俺はとうとう盛大なため息を吐き出した。
ちなみに、送迎船の待ち時間にやたら目に痛いオーナーとのポーカーで一億取り戻したことだけは言っておく。まぁ、イカサマだけど。