俺はこういう現場に居合わせる運命なのだろうかと飲みかけていたラムネを飲み干した。今時強盗なんて流行らねぇぜ。
蒸す様な暑さに辟易して、涼みに馴染みの店に入りとりあえずラムネの栓を開ければこれだ。毎度飽きずに金払ってから飲みな、と杖を振り回していたババアが突きつけられた銃口に珍しくビビったような面した。俺に対する強気はどうした。
「金出せ、金だ!」
そう息巻く強盗は多分頭が悪い。どこをどう見たらこのボロい店に金があるように見えるのか。強盗は今にも心臓が止まりそうなババアに銃口向けながら、手近にあった食料を鞄の中に詰め込んでいく。
「早くしねぇかババア!」
「ひっ…!」
「いつまで油売ってんだナマエ」
いよいよ心臓発作で死ぬんじゃねぇの、と青ざめたババアを眺めながらラムネ代をまさぐっていると入口からチビがひょっこり顔を出した。それに慌てたように銃口を向けた強盗は度胸がない。お前、悪いこと出来ないだろ。
「出ていけクソガキ!!」
「はぁ?」
段々余裕が無くなってくる強盗に比べ、銃口を向けられておいてクソガキと言われたのが気に食わなかったのかあの毎度憎たらしい顔で強盗を睨み上げたチビに、このチビの方が度胸あるんじゃないかと指差して笑ってやった。ら、今度は俺に銃口が向けられた。
「ナマエ、そんな奴ほっといていい加減行こうぜ」
「お前、現状分かってるか?」
「ジジイの呼び出しに行きたくない」
「おお、正解」
もうお前が居候代としてパシられて来いよ、なんてボヤけばあからさまに嫌そうな顔をしたガキにやれやれと肩をすくめて見せる。プルプルと震える小心者の強盗は怒りに喚いていたが聞かずにラムネ代をまさぐるが、不思議なことに手持ちが一銭も無いらしい。不思議である。早くしろとぶすくれだしたチビにため息を一つこぼし、小銭の代わりに探り当てたナイフをすこんと投げつければそれに気を取られた強盗は背後からのチビの一撃で華麗にのされぐしゃりと床に崩れ落ちた。
「ババア、ラムネ代ツケで」
今は呆気にとられぽかんとしてるババアだが、正気に戻ればあんたにツケる分はないよ!!と怒鳴り出すババアなので言い逃げ同然に店を抜け出す。
「最近は物騒でやだねぇ」
「ナマエも似たようなもんだろ」
「俺、超優良市民」
「…はっ」