意地と気合と泣き落としで抱っこにありつけた俺すごい。

仕事真面目にしてペド一か月自粛したら抱っこしていいって言われてコンマ一秒で頷いた時の若の微妙な顔は可愛かった。ドン引きしても可愛かった。なんで大人になったらアイアンクローかます怖い人に育っちゃったんだろうと言ったら思い切り大事なとこ蹴られた。辛かった。

「フッフッフ、変な気起こすんじゃねえぞ」

膝の上に座りながらご飯食べる若にすでにスタンバイできてます。

といったら未だ執行されてる簀巻きが再度ボンレスハムよろしく俺を締め上げようとするのでお口にチャックだ。にやけてもチャックだ。生意気そうな顔は泣かせたくてたまらないけど後が怖いから自重だ頑張れ俺。

そんなことを考えながらいつもよりぎこちない手元をにやけながら眺めていれば、大人用の食器が使いにくいのか若干飛び散ったり取りこぼしたりしている。それでも頑張る若のプライドマジぐっじょぶ。たまらん。でも言えないこの辛さ。

「若、食わせてあげましょーか?」

「…フッフッフ、黙るか死ぬか選べ」

「ほら、召使い感覚で。ね、若様。変なことしませんって、若様」

「……しょうがねえ野郎だ」

途端に見えない簀巻きが無くなって、おお動く!と言ったら腕の自由が奪われた。あ、そういうことですか。正面からあーんしたかったのお見通しですかそうですか。操られた腕が若のいいように食事を切り分け、若のいいように口元へ運ぶ。あ、これはこれでご飯三杯イけるわとその後ろ頭を眺めた。

そうして綺麗にご飯を食べ挙げて、食器を下げさせた後も若は俺の膝の上にいた。その優しさマジ天使だと言えば俺はいつでも天使だと言われて言葉に詰まったら降りようとしたのはないと思います若。

「若、簀巻き解放してくださいよ」

「フッフッフ、性犯罪者は信用ならねえ」

「子供の口から性犯罪者…やべえクるこれ」

「………」

「あ、はいすみません無言でぎりぎり締め付けないでくださいすみません」

はあ、とため息とともに再び簀巻きが外され、おやと首を傾げればぽすりと腹に若の頭が預けられる。疲れた。変なことしたら殺す。物騒な事を言いながら若は欠伸を一つ。

その頭を撫でたい衝動を意外と強靭な理性が頑張って抑えつつ若マジ天使を連呼していたら首をピンポイントで絞められちょっと三途の川でじいちゃんと談笑する夢を見た。じいちゃんに会えても嬉しくない。

「あ、若飴食べる?」

「フッフッフ、んなもん、なんで持ってんだァ?」

「そりゃあいつかわいい子に遭遇いや甘いの好きなんですよあははは」

「フッフッフ…まあいい寄越せ」

ポケットから取り出した子供受け重視のペロペロキャンディーの包みを剥いで差し出せば、何のサービスかそのままぱくりと銜えた若に悶えて死にそうになった。笑いながらペロペロキャンディー舐める若のためなら死ねると思ったけど本当に殺されそうだから言わなかった。全力で悶えたら視線が冷たかった。生きるのって辛い。

「フッフッフ」

それでもいつも通り笑う若をにやにやしながら眺めていたら、不意に俺を見上げてきてときめいた。

「なあに、若」

「ガキの見る世界も面白れぇもんだと思ってな、フフフフ」

くるりと向かい合わせで座りなおした若は、いつも無邪気に笑うけどそれよりも楽しそうに笑うものだから、ほぼ無意識にその頭を撫でた。

その手でそのままペロペロキャンディーの棒を持って、反対の手を頬に添える。見上げてくる顔がびくりと強張って、可愛いなあと思った。

ペロペロキャンディーの棒に力を込めれば簡単に口を開いて、歯に当たったキャンディーがからころと音を立てる。

口を開いて見えるちっちゃい舌にキャンディーを押し当てむにむにしてみたり頬の内側から押してみたり、好き勝手する俺に若はなにを言う訳でもなくされるがままになっていた。呆れた目も子供だと可愛く思える俺は真性ペドだと思う。

しばらくそうして遊んでいると、何かしゃべりかけた拍子にキャンディーに掻き出されるようにして一筋の唾液が若の顎を伝った。それを面倒くさそうに拭おうとする手を押さえて、俺を見ようと上を向いたせいで喉元まで伝ったそれを目で追えば。

ぷちりと、強靭なはずの理性が音を立てた。

ペロペロキャンディーを放り投げてその手で後頭部を押さえ込み、唾液を舐めとるように首筋に舌を這わす。ぴくりと震えた体を逃さぬように抱え込んで、ゆっくりと唾液の筋を追い舐め上げる。キャンディーの、安っぽいイチゴの味がした。

時折その細い首に吸い尽きながら、顎に伝った唾液を舌でからめ取ったとき若が切なげな声を上げ、そのまま声も飲み込むように唇を重ねた。ぬるりと舌をねじ込めば、迎えるような若の舌と触れ絡み合う。サングラスの奥の瞳が、とろりと可愛く溶けていた。

舐めとった唾液がまた溢れ落ち、上がる息に混じって零れる子供の声。抱え込んでいた腕でするりと背中を撫でて、唇を離した。

「…………」

「…………フッフッフ」

このタイミングで戻るとかマジ鬼畜だと思う。お約束でも鬼畜だと思う。